麦独特の香りを味わう自家製味噌
味噌は大豆と麹、塩を合わせて作りますが、麹は米麹を使う米味噌が一般的。米麹の変わりに麦麹を使うのが、麦味噌です。麦味噌は、九州や四国、中国地方で多く使われていて、甘口の味噌が多くなります。関東地方にも麦味噌がありますが、こちらは辛口が多いようです。
麦麹で作る麦味噌は、独得の甘さや香り、旨みが特徴的。自家製のよいところは、好みで塩分を調整できるところ。ここで紹介するのは、大豆1に対して、塩0.4~0.5の中辛から辛口の味噌。甘めが好きな人は0.4、辛口がいい人は0.5の分量の塩で仕込んでみましょう。甘口が好きな場合でも、塩分を減らしすぎるとカビが生えやすくなったり、保存性が下がるので、減らしすぎないことが大切。使い方は普通の米味噌と同じです。
【材料(できあがり約1kg分)】
・大豆:300g(加熱後は約2.1倍=630g)
・麦麹:300g 関連記事:「乾燥麹を生麹の風味に! 乾燥麹の戻し方」
・自然塩:120~150g
※たくさん作る場合は、大豆:麹:塩=1:1:0.4~0.5の比率で増やす
右上から半時計回りに大豆、麦麹、塩
【作り方】
1./大豆はよく洗い、たっぷりの水に12時間以上つけて戻す。
豆が途中で顔を出さないように多めの水で戻す
2./圧力鍋で豆を蒸す。蒸すと煮るより旨みが強くなる。鍋の底から5cmほど新しい水を入れて、底に皿などを入れて底上げし、ザルに豆を入れてフタをして加熱。蒸気が上がりはじめたら、軽く蒸気が出るくらいの火加減にして、約20分加圧して火を止め、15分ほど放置する。圧力鍋がないときは、鍋で豆が柔らかくなるまで3~4時間煮る。
加熱時間は鍋によって調節する
3./指でつまむと簡単につぶれるくらいの柔らかさになるまで加熱する。フタを開けるときはヤケドをしないように十分に注意する。
豆を押しつぶして固さを確認
4./豆をザルに上げて水気を切る。蒸し汁はあとで使うのでとっておく。
蒸し汁は捨てずにとっておく
5./豆を加熱している間に麹を準備。麹をボウルなどに入れ、固まりがあればほぐす。
手で固まりをほぐしてバラバラにする
6./麹に塩を入れて混ぜる。
麹に塩を加える
7./麹に塩をすりこむように、しっかり混ぜて「塩切り麹」にする。
麹に塩をもみこむように混ぜる
8./加熱した大豆を大きいビニール袋などに入れて、手でまんべんなく押しつぶす。豆が熱いうちはつぶしやすいが、ヤケドに注意。つぶしたら、豆を人肌(36-38℃)以下に冷ます。熱いと麹の酵素が働きにくくなる。
豆をしっかりつぶす
9./8のつぶした豆に、7の塩切り麹を加える。
豆と塩切り麹を合わせる
10./つぶした豆と塩切り麹をしっかり混ぜる。味噌だねが固いときは、とっておいた蒸し汁を加えて固さを調節する。固すぎると発酵が遅くなり、ゆるすぎるとカビが生えやすくなるので注意。耳たぶくらいの固さが目安。これで味噌だねが完成。
蒸し汁で固さを調節
11./清潔な容器に味噌だねを詰める。容器はあらかじめアルコールなどでふいて除菌しておく。味噌だねは空気を抜くようにボール状に丸め、容器に詰めていく。
空気を抜いて丸める
12./丸めた味噌だねを容器に入れる。
味噌だねを詰める
13./ギュッと押して空気を抜くようにして、みっちり詰めていく。1個ずつ入れたら手で押して空気を抜く。全部詰めたら、表面を平らにならす。
表面を平らにする
14./容器の内側についた汚れなどは、アルコールをひたしたキッチンペーパーなどで拭いておく。カビの予防になる。
容器の内側を拭く
15./表面が空気に触れないように、ぴっちりラップで覆う。
ラップをぴったりのせる
16./塩などをビニール袋に入れて重しをする。重しはしなくてもよいが、したほうがカビの発生する確率が下がる。重さの目安は味噌の半量程度だが、それより軽くても問題ない。
ビニール袋入りの塩で重しをする
17./ホコリが入らないようにフタをして、仕込み完了。常温に置いて発酵熟成させる。熟成期間の目安は6か月から1年。好みの味になったら冷蔵保存するとよい。なお、発酵熟成の途中でカビが出る場合もあるが、カビが出ても失敗ではない。カビは取り除けばOK。カビを取り除いたあとは、ラップを新しいものに交換し、容器の内側はアルコールで拭いておく。
フタをして6か月以上発酵熟成させる
18./できあがり。
仕込み後約6か月
仕込み後約12か月
●サツマイモと舞茸の味噌汁(麦味噌を使ったレシピ)
【材料(2人分)】
・サツマイモ(小):10cm
・舞茸:1/4パック
・だし汁:300ml
・麦味噌:適量
・三つ葉:適宜
【作り方】
1./サツマイモはよく洗い、皮ごと食べやすい大きさに切る。舞茸は小房に分ける。
2./鍋にだし汁とサツマイモを入れて加熱し、イモが柔らかくなったら舞茸を加える。キノコに火が通ったら麦味噌を溶き入れ、沸騰直前に火を止める。お椀に盛り、好みで三つ葉を添える。
撮影:信長江美
文・レシピ:オザワエイコ
手作り調味料研究家。編集者。自家製調味料の仕込み教室「かもしラボ」主宰。著書に『だからつくる調味料』(ブロンズ新社)がある。