低温でも発酵促進する乳酸菌/良質の飼料供給へ秋田県畜産試験場など発見

カテゴリー:食情報 投稿日:2016.12.26

家畜向け飼料の原料となる飼料用米などを、温度の低い冬場でも発酵を促進させることができる乳酸菌を秋田県畜産試験場が発見し、実用化に向けた取り組みを進めています。飼料用米のほか、牧草やトウモロコシ、食品残さにも使うことができ、本州以南であれば、一年を通して質の高い発酵飼料をつくることが可能になるそうです。需要が高まっている発酵飼料を安定的に供給することが期待されています。

この乳酸菌は、秋田県畜産試験場内の牧草地で発見され、「C5127Di株」と名づけられました。渡邊潤・主任研究員によると、サイレージという発酵飼料を安定的につくることのできる乳酸菌を探そうと、刈り取った牧草の絞り汁を寒天培地で繁殖させる中で見つかったそうです。

サイレージの生産に使われる一般的な乳酸菌では、温度が摂氏10度を下回ると発酵活動をしなくなるため、カビなどが繁殖してしまいます。しかし、今回発見された乳酸菌では摂氏4度でも発酵が進み、この乳酸菌を添加して発酵させたサイレージは、水素イオン濃度(PH)値が良好な品質の基準される4.5以下にまで下がり、4.3となりました。添加しなかったサイレージでは5.0を上回ったそうです。

一般的な乳酸菌は特定の糖分しか発酵させることができませんが、この乳酸菌は20種類の糖分の発酵を促すことが可能で、飼料用米だけでなく、牧草やトウモロコシ、食品残さなど幅広い飼料原料を発酵させることができることも分かりました。この乳酸菌で発酵させたサイレージを乳牛に与えたところ、食いつきが良く、良好な乳成分が得られたそうです。発酵が十分でないサイレージでは下痢をする牛もいましたが、この乳酸菌を添加して発酵させるようにしてからは下痢をすることもなくなったそうです。

従来の乳酸菌では、気温の高い時期にサイレージの生産をする必要がありましたが、飼料用米は主食用米の後に作られるため、生産を早めるのが困難でした。秋田県でのサイレージ調整可能期間は、これまで一年のうち5.5ヵ月ほどでしたが、この乳酸菌を使うことで調整可能期間が大幅に延び、増産が可能になります。同試験場では、共同して研究にあたった県総合食品研究センターと秋田十條化成(秋田市)などとともに、発酵に最適な菌数や必要な添加剤、生産設備など量産化に向けた取り組みを進め、2019年度の実用化を目指しています。

渡邊主任研究員は「良質なサイレージを生産する必要性は全国的に高まっており、この乳酸菌がその一助となればと思います」と話しています。

 

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編集部
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