【今さら聞けない発酵の疑問(14)】乳酸菌は生きて腸まで届かない?

カテゴリー:食情報 投稿日:2020.11.09

ヨーグルトを食べても、乳酸菌の多くは死滅するのか? 結論をいいますと、その多くは、腸まで届かないのです。口から入った食品の消化のしくみはこうなります(乳酸菌の多くは生きて腸まで届きませんが、「プレバイオティクス」効果で腸内環境をよくする働きについて解説します)。

まず胃に収められ、胃の中でpH1~1.5の塩酸を含む胃液にさらされます。酸によってほとんどの菌はここで死滅します。ただし、ストレスによって胃液の分泌に変化があったりすると効果が落ち、さらに十二指腸に移され、アルカリのすい液などにより中和されることになります。ここで胆汁(たんじゅう)と混ぜられ、小腸で栄養を吸収し、大腸を経て排せつされるのです。胆汁はうんちの色となる胆汁色素を含んでいます。この胆汁も抗菌性を持っています。生き残った菌種が小腸や大腸の中の腸内細菌となるわけです。

このように乳酸菌の多くは生きて腸まで届かないことが多い理由になります。

 

ヨーグルト製造に使われる乳酸菌は、主にBifidobacterium 菌(ビフィズス菌)やLactobacillus bulgaricus(ブルガリア菌) やlactobacillus gasseri(ガゼリ菌)などです。ビフィズス菌はもともと赤ちゃんの腸内にいる菌種で加齢とともに減少することが知られています。口から摂取したビフィズス菌は、糞便でも検出されることから、腸でも生育することが報告されています。

一方、ブルガリア菌やガゼリ菌などは、経口摂取しても、糞便からの検出はされません。腸内に届かず死んでしまう乳酸菌になりますが、死菌体が腸内細菌の餌となり、これによって、善玉菌が活性化し、悪玉菌の生育を抑制することが報告されています。このように腸内細菌の増殖をたかめて、宿主の健康を高めていく考え方を「プレバイオティクス」といいます。また、腸まで届かないブルガリア菌のヨーグルトを食べることによって、腸内の悪玉細菌が抑えられ、便中のインドールやアンモニアなどの毒性成分(うんちがくさい原因)の生成が抑制されるとの報告もあります。

金内誠(宮城大学教授)

 

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