【小泉武夫・食百珍】漬け物と日本人(3)

カテゴリー:漬物 投稿日:2019.03.15

 ぬるま湯に溶いて飲めば整腸剤になる

 昔の人は、漬け物を食べるとき、漬けあがった野菜だけを食べたのではなく、2日に1度は漬け床をぬるま湯に溶(と)いて飲んだという。糠味噌などは、まさに乳酸菌の宝庫であり、あたかも西欧人がヨーグルトや乳酸菌飲料を飲むのと、そう変わらぬことを知っていたかのようである。

 そういえば「腹の具合が悪くなったら、くさやの漬け汁をぬるま湯に溶いて飲む」と語ってくれた伊豆七島・新島の古老の話や、東北の山間でやはり聞いた「茸(きのこ)の塩漬け汁をぬるま湯で割って飲む」という風習は、いずれも有益な腸内細菌を体内に送り込む、整腸剤としての知恵だったのだろう。

 

 人類の深い知恵の産物

 漬け物は日本人だけのものではなく、加工食品の中では最も古い歴史を持ったもので、人間のつくったうれしい食の文化のひとつである。従って、地球上のほとんどの民族が共有する嗜好物なのであり、それ故にそれぞれの民族はこれに親しみや憧れ、時には浪漫まで寄せながら長い歴史の中で育て上げてきた。

 野菜の根や茎、葉ばかりでなく、魚介や肉、果実まで漬け物の材料としてきたが、そこには人類の深い知恵が込められてきた。たとえば、漬け物を漬けることにより、香味を豊かにしながら保存性まで高めることができ、また、それを食べることで食欲が昂進するとともに、体にとって大切な有効成分まで摂取することもできるようにした。漬け物の起源が有史以前に遡るとされていることを考えると、人類は漬け物をつくることを通してさまざまなことを学習し、多くの知識を積み重ねてきたといえる。

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この記事を書いた人

編集部
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