微生物は肉眼では見えなくて、顕微鏡でようやく見ることができる生物です。細菌(納豆菌、乳酸菌、食中毒菌、大腸菌など)や原生生物(アメーバ、ゾウリムシ)、藻類、カビ、酵母類がそれに当たります。つまり、きわめて微細な生物なのです。酵母は約5μm(マイクロメートル)、乳酸菌や酢酸菌などは0.5~1μm。ちなみにウイルス(virus)は0.1μm。※1μm=1mmの1000分の1。
生物の定義については、
・自らで増殖する能力を有すこと
・エネルギーを変換・生産する能力を有すること
・自己と外界との明確な隔離である細胞膜があること
とされています。
一般的な微生物は栄養を取り込んで、細胞内でエネルギーを生産します。この時に副産物として排出されるものが、発酵生産物となります。酵母は、ブドウ糖を取り込んでエネルギー生産し、エタノールを作ります。また、乳酸菌は、乳糖を取り込み、乳酸を産出するわけです。これが、アルコール発酵であったり、乳酸発酵であったりするわけです。
ざっくりいうと、ヒトにとって有益であれば発酵、無益であれば腐敗となります。そのため、ヒトに有益な物質を生産すれば発酵微生物なのです。しかし、同じ菌種でも受け手によって「有益」か「無益」かが異なります。
食品に同じ微生物が生育しても、受け手によって違ってきます。ペニシリンを生産するアオカビが、食品に生育していたら腐敗。納豆菌が、甘酒に生育していたら腐敗、煮豆に生育したら発酵となります。
すなわち、適正なところに、適正な菌種が生育することが「発酵」で、有益な物質を作る菌が、発酵微生物というわけです。
同じ微生物のウイルスは、他の細胞に取り付いて、その細胞に侵入し、ウイルスを増やします。また、自分自身の情報の素となる核(核酸)をカプセルに入れたもので、栄養を取り込んだり、物質を生産したりしません。つまり、発酵や物質生産もできず、自らが増殖できないウイルスは「生物」ではないということになります。
コロナウイルスやインフルエンザなどは、ヒトの細胞に取り付いて、核酸を中に入れ、ヒト細胞がウイルスを生産するように仕向け、増殖します。すると細胞が正常に機能しなくなり、この防御反応として、炎症を起こし、発熱するわけです。
金内誠(宮城大学教授)