【今さら聞けない発酵の疑問(5)】麹と糀は同じ意味?

カテゴリー:発酵食品全般 投稿日:2020.08.03

漢字か国字か

どちらも穀物に麹菌を生育させたものを指します。しかし、「麹」は中国で造られた漢字で、「糀」は日本で作られた漢字です。日本で作られた漢字は、「国字」といいます。つまり「麹」は漢字、「糀」は「国字」です。中国では、麹を造るときには、麦で造ります。

日本では、米で「麹」を造るために、これらの字の偏で原料の違いがわかります。また、漢字「麹」の旁は、「匊」「菊」を示しています。「麹」の意味を考えると、匊は、菊の花の意味ではなく、米(粒)を勹(包む)という意味からきているのです。つまり、穀物の粒が、麹菌などのカビによって包まれていることを示しているのです。一方、国字の「糀」の旁は「花」を示します。カビの生えた状態を、花が咲いたようだという観察力からできた文字といえます。

 

餅麹は中国、散麹は日本

ところで中国の麹の造り方は麦をつぶして粉状にし、水を混ぜて団子状やレンガ状にして、種麹を接種することなく、放置することで作られます。この時生育する麹は、日本の麹菌とは異なり、グレー色のクモノスカビです。出来上がった麹を十分に乾燥させて、中国焼酎として有名な白酒(ぱいちゅう)の製造に使われます。団子やレンガ状にした麹は、餅麹(もちこうじ)といい、日本の麹(糀)のように粒状のものは散麹(ばらこうじ)といいます。

このように、麹菌の種類が異なる二つですが、江戸時代に書かれた『本朝食鑑』(ほんちょうしょっかん)には、「米麹」の文字が見られますし、イワシを「塩麹」漬け込むとの記述もあります。また、酒蔵や味噌屋でも「麹」を使います。また、『守貞謾稿』(もりさだまんこう)でも、味噌作りの項で「麹」を見ることができます。しかし、『人倫訓蒙図彙』(じんりんきんもうずい)という江戸時代の職業を紹介した書物には、「こうじ」を造る「糀師」の紹介があり、「糀」の文字を見ることができます。また、広重の錦絵の「外桜田弁慶堀糀町」には、「糀」の文字が使われています。

つまり、日本は昔から、この二つの字をうまく使い分け、専門用語としての「こうじ」は「麹」、市井で、「こうじ」を楽しむような一般向けには、意味の分かりやすい「糀」を使っていたのではないでしょうか。現在でも、専門用語や法律用語では「麹」を用い、甘酒や町の「こうじ屋さん」では「糀」を使っている例が多いのです。

金内誠(宮城大学教授)

 

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