一言でいうと麹菌の胞子を売っている会社です!
麹を造るとき、「種麹」という種菌を使用します。この種麹はコウジカビの胞子を集めたものです。米の表面にある外皮の内側には、糊粉層(いわゆる「ぬか」)という栄養が多く含む部位が存在します。この外皮と糊粉層を残した玄米を蒸し、木灰を混ぜたものに、コウジカビを生育させます。なぜ木灰を入れるかというと、栄養分である「カリウム」を含むからです。コウジカビは胞子を大量に生産します。この胞子のみを集めたり、胞子のついた麹(米)粒をそのまま種麹としたりして、麹造りに使われます。この種麹を使う方法で麹を造ると、ほかの菌種が生えることなく安全に品質の良い麹を造ることができます。
種麹メーカー秋田今野商店の今野社長
種麹を造る会社が「種麹屋」というわけです。この種麹屋さんは600年の歴史を持っているところもあります。木灰を添加する種麹を造ることで製麹する方法は600年前から伝えられてきたといわれます。
木灰のカリウムはミネラルとしての栄養素だけでなく、アルカリ性に保つ効果があり雑菌を抑制することで優良な麹菌選抜に役に立つとされています。
室町時代には、木灰添加の方法は秘密とされ、その秘密を京都の麹を造る協同組合(麹座)で共有していました。当時、種麹から、麹を造って酒造場に売っていました。そのために酒造場と麹屋さんが対立したこともありました。とくに優秀であった麹座は北野天満宮を中心とした北野麹座であったとされています。ところが、麹を独占されて困ったのが酒造の組合(酒座)となります。酒座は延暦寺に救済を求めることで、天満宮と延暦寺との対立に発展したといわれています。
これらの独占が、日本の産業の障害であったことは間違いなく、この後、織田信長の出した「楽市楽座」の令につながり、市中での清酒造りへと広がり、酒文化を発展させました。
金内誠(宮城大学教授)