戦国武将と味噌の関係
原料の大豆は「畑の牛肉」といわれるほど栄養豊富な食品ですね。
味噌については、日本全国には数多くのご当地味噌が存在します。これは、群雄割拠の戦国時代にさかのぼります。栄養豊富な味噌は、当時の戦略物資だったので、戦国大名ごとに、独特な味噌文化がつくり上げられました。
徳川家康の居城があった岡﨑では、八丁味噌。東北の雄であった伊達政宗の仙台味噌、戦の天才だった甲斐の虎こと武田信玄は信州味噌。また、川中島で武田と5度にわたって壮絶な死闘を繰り広げた「越後の龍」こと上杉謙信は越後味噌をつくらせていました。
八丁味噌と仙台味噌
味噌は、大豆と塩、それに米か麦の麹を混ぜ、発酵熟成させたものです。米麹と大豆の割合で味噌の色が異なり、味わいも違ってきます。たとえば、米麹を用いず大豆しか使わない八丁味噌は、濃い色をしています。
また、大豆に対し、米麹の量を5~8割程度しか使わない(例えば大豆1kgに対し、米0.5~0.8kgを使用して仕込む)仙台味噌は、濃い赤色の味噌になります。また、米麹の量が極端に多い(大豆の2倍量の米麹を加えて発酵・熟成)京都の西京味噌は、白い色の味噌になります。
麹の割合と熟成の期間によって色が変わる
国内でシェアが多い信州味噌のタイプ(ナショナルブランドのメーカーの味噌)では、大豆の重量と米麹の重量が等量を基準として仕込まれます。この味噌は、仙台味噌や白みその中間色となります。つまり、麹が多いものほど味噌の色は白くなる傾向があり、少ないものは赤くなる傾向があります。熟成期間にも関係してきます。長く熟成すれば、大豆が消化し、アミノ酸を生成します。さらに麹から糖も生成され、アミノカルボニル反応という着色反応が進んで色がつきます。
つまり、麹の割合が多く、熟成が短いものは「白味噌」となり、大豆の割合が多く、熟成が長いものは「赤味噌」となります。一般的に赤味噌は、コクがあるタイプとなり、肉料理、スジやモツの煮込みなどに使われます。白味噌は甘く、風味を引き立てるので、味噌汁のほか「ぬた」や白身魚の漬け床にも利用できます。料理のプロは、「白味噌」と「赤味噌」の独自のブレンドで合わせ味噌をつくっています。
金内誠(宮城大学教授)