焼酎は幕末には、どの家にもあった
焼酎は日本の伝統的蒸留酒です。沖縄には15世紀(応仁の乱の頃)に焼酎が存在していたという記録があり、これが泡盛の原型といえるでしょう。また、16世紀(鉄砲伝来の頃)には、鹿児島県伊佐市の大口郡山八幡神社の建築に携わった大工が、焼酎をふるまってくれないという愚痴を板に落書きをして建物に忍ばせていました。これは、当時から庶民に焼酎文化が根付いていたことを示すものです。余談ですが、幕末には、どの家でも焼酎が常備してあり、飲んでよし、消毒にも使用していたことを司馬遼太郎の小説に見ることができます。
現代の焼酎のラベルには、甲類焼酎、乙類焼酎、本格焼酎と書かれています。これは何を表わしているのでしょう。
甲類焼酎はアルコールの純度が高い
甲類焼酎とは、「新式焼酎」と呼ばれ、大きな連続式蒸留機で蒸留を行ないます。糖蜜などの原料をそのままアルコール発酵させた醪(もろみ)を連続蒸留器の蒸留塔で蒸発、分縮、還流を繰り返すことで、純度の高いエタノールというアルコールを取り出します。これを、適度に熟成・希釈することで甲類焼酎になるのです。
甲類焼酎は工業的に大量に造られるエタノールなので比較的安価なアルコールといえます。そのため原料由来の香気や発酵時に生成される香気を含んでいません。果実を漬け込むリキュール(梅酒など)の製造に適しています。また、チューハイの原料になったり、食品製造用の消毒液や生めんなどの保存料になったり用途は広いといえます。
乙類焼酎と本格焼酎はいっしょ?
一方、乙類焼酎は麹と穀物原料で発酵させた醪を単式蒸留機で蒸留する焼酎。アルコールは、45%以下に希釈されています。アルコール以外の香味成分も含まれ、原料由来の香気や発酵時に生成される香気も含んでいます。米、麦、さつまいも、そば、黒糖など使われる原料によって風味や味わいが変化し、バラエティーに富んだ焼酎になります。
かつては乙類焼酎=本格焼酎という規定が定められていました。現在では、乙類焼酎と同じ単式蒸留機で蒸留した焼酎、ほかに穀類、芋類を原料や麹に使用している、清酒かすを原料に使用している、政令で定められた砂糖と米麹、水を使用していることなどの規程があります。
上記に該当しない場合、穀類麹もしくはいも類麹で水を除いた原料の50%以上の重量を占めていれば、本格焼酎と名乗ってよいことになっています。つまり、乙類焼酎のカテゴリーの中に「本格焼酎」が存在しているのです。
アルコール度数が高く、すっきりして、くせのない甲類焼酎はレモン割りや梅割り、酎ハイなどの割材に向いています。原料の風味が強い乙類焼酎は、ロックや水割り、お湯割りが適しています。
金内誠(宮城大学教授)