微生物を体内に直接取り込める
発酵食品がからだに良い理由は、主に4つあります。
1つ目は、微生物を直接取り込むことによる効果、つまりプロバイオティクス効果(体内に有益に働く生きた細菌を摂ることで起きる効果)です。ヒトの腸は、体内の入口となっていて、腸を通して血管内へ栄養分も含め取り込みます。この時、細菌やウイルス、花粉などの異物を取り込むことがないように働くのが免疫機能です。乳酸菌は、腸内の免疫機能に作用し、免疫機能を高めてくれます。この免疫機能は、血液に乗ってさまざまな器官(鼻やのどなど)に作用します。つまり、ある種の乳酸菌、たとえば『R-1乳酸菌ヨーグルト』を摂ると、免疫機能が高まり、風邪をひきにくくなったり、花粉症の症状が軽くなったりする効果があるといわれています。
体内に吸収しやすい
2つ目は、微生物が発酵食品の素材を分解することにより、体への吸収がしやすくなることです。例えば、甘酒は、米から作られます。米を蒸して麹菌を繁殖させて、麹にします。このとき多くの酵素を作り出し、米を分解できるようになるわけです。米麹をお湯の中に入れ、糖化すると米のデンプンは、完全にグルコースや麦芽糖へ分解されます。また、米の細胞壁の一部はオリゴ糖へと分解されます。そのため、デンプンから生成した糖は、腸から容易に吸収され、栄養として使われます。また、分解されていない細胞壁は、食物繊維として排泄に使われますが、分解された「オリゴ糖」は、腸内細菌のえさとして使われ、低級の脂肪酸などを造ることで、腸内の蠕動(ぜんどう)運動が促進されることで、便通改善につながります。
栄養成分の変化・改善
3つ目は、微生物の生育により、食材の栄養の改善が行われることです。例えば、ヨーグルトです。ヨーグルトの原料は牛乳です。牛乳はカルシウムやタンパク質の摂取には良い食材で健康にいいものです。ヨーグルトの乳酸菌の効果はもちろんですが、発酵によっても栄養成分が変化します。牛乳に入っている乳糖は取り込まれ、ヨーグルトには含まれません。ヒトは、母乳を飲んでいる乳児時には、乳糖を栄養として取り込んでいます。しかし、幼児から成人に成長の過程で、その能力は低下し、腸内では分解・取り込みができなくなる「乳糖不耐症」になります。日本の成人の6割は、「乳糖不耐症」です。そのため牛乳を飲むと、腸内細菌が乳糖を取り込み、ガスを生成し、お腹がゴロゴロしたり、腸が張った感じになったり、下痢をしたりします。ところが、ヨーグルトは乳糖を含まず、「乳糖不耐症」のヒトでも、カルシウムやタンパク質を摂取でき、生きた乳酸菌の効果も期待できるというわけです。
ビタミンなど生み出す
4つ目は、微生物が機能性成分やビタミンなどを作り出すことです。麹菌で発酵させた甘酒や乳酸菌で発酵させたヨーグルト類の発酵食品は、血圧の上昇抑制効果やリラックス効果があるGABAを含みます。甘酒は、麹菌がつくるビタミンB群を含み、納豆は納豆菌がつくるビタミンKを含んでいるのです。
このように発酵食品には、健康に良い効果があるというわけです。
金内誠(宮城大学教授)