納豆菌のはたらき
納豆は納豆菌と呼ばれる菌種が生育することで独特の「香り」と糸を産生します。「糸引き納豆」と呼ばれるゆえんです。一方、糸を引かない納豆も存在します。西日本ではこちらの方がなじみ深いかもしれません。塩辛納豆、浜納豆、寺納豆などといわれているものです。これは納豆菌ではなく、麹菌が納豆の周りに生育しているものです。そのために「香り」も「糸」もありません。
納豆の糸の効果
糸引き納豆の歴史は古く、室町時代のおとぎばなし、『精進魚鳥物語』にも登場します。生臭(魚)料理と精進料理を擬人化させ、お互いが戦うというストーリーで、英雄として納豆太郎糸重が登場します。これこそ現代の擬人キャラ(刀剣男子)の走りかもしれません。
このように納豆=糸というイメージは強いのです。そのために糸を出そうと毎朝何十回と混ぜている人も多いかと思います。納豆の糸はポリグルタミン酸(胃壁を守り、腸管で老廃物などの排泄を促進、ナットウキナーゼは血栓を溶かす酵素)という物質です。
納豆の糸は、うま味成分であるグルタミン酸の重合体で、実は味はありません。よく練ることによって、空気を巻き込みふわふわの泡状になります。また、ポリグルタミン酸は保水性に優れ、醤油が、豆とご飯にまとわりつくような働きがあり、おいしく食べられる効果があります。地方によっては、砂糖を加えるところもあって、さらにネバネバ度が増しますが栄養価などに変化はありません。
結論は、納豆をよく混ぜると美味しく感じるのは、ふわふわになったことで周りの食材との相性がよくなるからだといえます。
金内誠(宮城大学教授)