納豆に含まれる酵素が有効
日本の伝統食品である納豆を普段から良く食べる人は、ほとんど食べない人に比べて脳卒中で死亡するリスクが3割ほど低くなることが、岐阜大学の研究で明らかになりました。納豆に含まれている、血管が詰まるのを防ぐ作用がある酵素などが関係している可能性があるとみられています。
この研究は、同大の永田知里教授(疫学・予防医学)らの研究チームが、岐阜県高山市に住む人々を対象にした「高山スタディ」という集団疫学調査のデータを分析したものです。1992年時点で35歳以上だった男女計約2万9000人に、健康状態や食事内容、生活習慣などについて質問してデータを集め、16年後の2008年10月までの生死と死因について調べました。食生活のうち、大豆製品については、豆腐、味噌、大豆、納豆、豆乳、高野豆腐、油揚げ、厚揚げなどを、過去1年間にどの程度食べていたかについて尋ねました。
豆腐やみそなどの大豆製品も
16年間で計1678人が循環器疾患で亡くなっていました。そのうち677人が脳卒中で、308人が心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患で死亡していました。
納豆を食べる量に応じて4つのグループに分け、年齢や喫煙の有無、運動習慣などによる影響が出ないようにして集計したところ、納豆を最も良く食べていたグループ(一日あたり7.3g)の脳卒中による死亡リスクは、納豆をほとんど食べないグループよりも32%低いことが分かりました。虚血性心疾患による死亡リスクも33%低く、循環器疾患全体による死亡リスクも25%低いことが明らかになりました。
納豆を最も良く食べていたグループは、30g入りのパックを週1〜2個程度食べていたことになります。納豆に含まれる「ナットウキナーゼ」という酵素には、血栓を溶かす作用があることが分かっています。また、豆腐やみそといった大豆由来のたんぱく質を多く摂取するグループでも、脳卒中による死亡リスクが25%低く、虚血性心疾患の死亡リスクも低下する傾向がありました。
今回の研究は、米国の臨床栄養学の学術誌「The American Journal of Clinical Nutrition」電子版に発表されました。納豆の定期的な摂取が、脳卒中などの循環器疾患による死亡リスクを低下させる可能性を世界で初めて示したことになります。研究チームは今後、他の集団を対象に、納豆や大豆製品の摂取量と循環器疾患との関係を調べて確認する必要があるとしています。
納豆に加えて、豆腐やみそなどの大豆製品を日々の食事に幅広く取り入れることが、健康によい食生活につながることになりそうです。