ヨーグルトは、ご存知のように乳を原料として乳酸発酵させた食品で、固形物のものや半固形、液体の飲料まであります。
ヨーグルトの歴史は古く、遊牧の民の貴重なタンパク質源として食べられてきました。インド、ネパール、スリランカ、モンゴル、中央アジア、グルジア、アルメニア、ブルガリアなどの東ヨーロッパ、トルコ、ロシア、スカンジナビア半島などアジアからヨーロッパの広い範囲で食されてきました。原料乳も、その国々で飼育されている動物の牛、馬、ヤギ、ヒツジなど様々です。日本でも、飛鳥時代から平安時代にかけて、牛乳で造ったヨーグルトのような食品である酪(らく)や酥(そ)があったといわれます。その後、日本での牛乳文化はすたれ、明治期まで動物タンパク質を食する文化は途絶えました。
ところで、このようなヨーグルトのなかで、なぜブルガリアなのでしょうか?
1970(昭和45)年、大阪で万国博覧会(大阪万博)が開催されました。このときの目玉は、大阪の万国記念公園の太陽の塔と(なんといっても)アメリカ館の月の石でした。この時、大手ヨーグルトメーカーの社員が、ブルガリア館でブルガリアヨーグルトを食べていました。このとき、本場のヨーグルトの味に驚嘆したといわれています。
これまでのヨーグルトは、お菓子のように甘く、寒天やゼリーで固めてあったものがほとんどでした。これらは、駄菓子屋さんで売っていたものです。そのようなヨーグルトに慣れた私たちに本場の味が受け入れられるはずもありません。
販売当初は、酸味が強すぎるや腐っているのではないかなどのクレームが相次いだそうです。日本人の口に合わなかったのです。さらに、当時のブルガリア大使館からもネーミングを拒否されたともいわれています。
しかし、現在では発酵食品の健康志向や大手メーカーの宣伝、味の改良などで、ブルガリア政府公認の本場のヨーグルトとして存在するようになったのです。
金内誠(宮城大学教授)
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