【今さら聞けない発酵の疑問(32)】なぜ昔の納豆は藁に入っていたの?

カテゴリー:納豆 投稿日:2022.04.13

納豆は、ご存知のように、蒸した大豆を納豆菌によって発酵させたものです。納豆菌は、枯草菌ともいい、枯れた藁(わら)に多く生育しています。このために藁に蒸した、あるいは煮た豆を藁苞(わらづと)に入れます。そうすると藁についた納豆菌が大豆で生育し、納豆菌が出来上がります。しかし、ここで運よく納豆菌が生育するとは限りません。藁は熱湯で消毒します。この時に食中毒を起こすかもしれない細菌は殺菌されます。熱に強い納豆菌を含む枯草菌は生き延びることができるのです。しかし、ここで問題点が……。

枯草菌のすべてが納豆菌ではありません。つまり生育してもうま味や糸を引くような高品質な納豆ができないことがあるのです。必ずおいしい納豆ができるかは「運」次第ということになります。納豆の糸が少ないところでは、糸をいっぱい出すために砂糖を加えて食べるという風習もあるそうです。実際に納豆に少量の砂糖を加えると、納豆の糸が多くなります。

そこで、優秀な納豆菌を育てる方法が確立されました。北海道大学の半澤洵教授は、純粋な菌を培養し、これを種菌とすることで、失敗のない高品質な納豆造り法を開発しました。これを「半澤式納豆製造法」といい、全国にこの方法が普及しました。

現在でも「宮城野菌」として、納豆の種菌を全国に配布している宮城野納豆製造所(宮城県仙台市)では、ラベルに「半澤博士製法」と記載しています。

種菌が使われることで藁苞が使われなくなり、木を薄くした経木(きょうぎ)というものに包まれている納豆が大正~昭和にかけて販売されるようになりました。現代では、プラスチックケースに入れられており、味わいがないものになりました。しかし、納豆の味は向上し、臭わない納豆なども販売されており、食べ方もパンやパスタなどバラエティに富んでいます。これも半澤先生のおかげです。

金内誠(宮城大学教授)

 

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