中東に位置し、親日国として知られるヨルダンの主食は、ホブスという丸く平たいアラブのパン。ディップをつけたり、香辛料で味付けした挽肉を包んで焼いたり、乾燥させて砕いてサラダにトッピングしたりとさまざまな食べ方がある。
生地を薄く伸ばして焼く
焼きあがったホブス
その“ホブスのおとも”として比較的ポピュラーな料理が、「ムタッバル」。焼いたナスをペースト状にし、ヨーグルトとレモン汁を混ぜたシンプルな料理で、ディップとしてホブスにつけて食べる。
首都アンマンのレストランでは、店員が炭の入ったバケツを持って回り、各テーブルの水たばこに火をつける。しかし、そのためだけではなく、ホブスを焼くのも、ムタッバルのナスを焼くのも、炭火を使っている。炭火でじっくりと焼いたムタッバルは、ペーストにしたナスの風味の中に香ばしさが残っている。あっさりとしたナスよりもヨーグルトの風味が勝っているのではと思ったが、意外にもナスがしっかりと主張。ナスの甘さに改めて気づかされる料理だ。ヨーグルトのわずかな酸味が、あっさりと爽やか。店によって味つけや盛りつけは異なるが、概ねドーナツ型に盛りつけられ、オリーブオイルがふんだんに使われている。この店では、ドーナツの穴部分に刻んだトマトとグリーンチェーリーが添えられていた。
ムタッバル
湿気の多い日本と違って、湿度の低いヨルダンでは食卓にのぼる発酵食品といえば、ヨーグルト。数あるヨーグルトを使った料理の中でもムタッバルはポピュラーで各家庭でも作られる。
他にも、ヨーグルトを使った料理は多い。たとえば、ヨーグルトをふきんで包んで一晩水を抜いて固めたラブネ。ラブネに塩・ニンニク・ミントの葉を混ぜてオリーブオイルをたっぷりとかけたラブネマエーズ。柔らかく煮込んだ羊肉にヨーグルトスープをかけてごはんと一緒に食べるマンサフ。ヨーグルトに刻んだキュウリやミントの葉を入れてサラダとして食べるヒヤールビラバン……。
ヨーグルトを使った料理の豊富さに驚く一方、日本の発酵食品の幅広さにも改めて気づかされた。食文化はその土地の気候風土と密接に関わっていることを再認識させられた。
取材・文/柏木智帆