干し大根の歯ごたえとうまみをぎゅっと詰め込んだ「たくあんの缶詰」が海外で注目を集めています。国内で唯一、天日干しのたくあんを生産する道本(みちもと)食品(宮崎市)が 2013年から売り出し、海外旅行の時のお供や、海外在住の日本人へのお土産に好評だそうです。イギリスやスイス、韓国などにも輸出されています。「和食」が無形文化遺産に登録されたことを受け、「日本の伝統食品として、もっと多くの人々に親しんでもらえたら」と意気込んでいます。
天日干し
「たくあんの缶詰」を開発したのは、同社三代目の道本英之社長(58)です。海外の人々にもたくあんを知ってもらおうとアジア各地の展示会や見本市に出展していた際、「常温で保存できないか」「賞味期限を長くできないか」との声を聞きました。若い人にもたくあんを手にしてもらえ、そして海外に売り込んでいくためにはどうすればよいか――寄せられた要望をヒントに、 2010年から開発に取り掛かりました。
当時、缶詰のたくあんは自衛隊の携行食として存在していたものの、一般向けに販売されている製品はありませんでした。たくあんの切り方、調味液の濃度、加熱殺菌する温度や時間などについて、研究を重ねたそうです。一番苦心したのは加熱殺菌する温度や時間。通常の缶詰は 120℃で4分以上かけますが、「それでは、たくあんがおでんになってしまって独特の歯ごたえが失われてしまいます」と道本さん。コリコリとしたたくあんの食感を保つ最適な温度と時間を見つけるのに、試行錯誤を重ねたそうです。
缶は扱いやすいプルトップ式にし、樹脂製キャップの中には、英語と中国語で説明したリーフレットを入れています。缶詰なので液漏れやにおい漏れもなく、通常の袋詰めのたくあんの賞味期限が1年なのに比べ、缶詰は3年保存ができるそうです。
梅酢味、こんぶ味、とうがらし味に、地元宮崎の焼酎にも合うしょうゆ味の割干し大根漬の4種類。2013年4月から発売を始めると、月に4000缶ほど売れ、翌年にメディアなどで紹介されると、その倍に伸びたそうです。宮崎空港や羽田空港の売店のほか、自社のウェブサイトでも販売しています。
こんぶ味
とうがらし味
同社のたくあん関連製品は缶詰を含めて15ヵ国・地域に輸出されています。道本社長は「世界文化遺産に登録された『和食』に欠かせない伝統食として、もっと多くの人々にたくあんを知ってもらえたら。アジアだけでなく、世界にお米を食べる国・民族は多くいますので、もっと戦略的に売り込んでいきたい」と話しています。
1缶(70g)390円(税込み)。問い合わせは、同社(0985-86-0006)へ。
道本食品のウェブサイト:http://www.hinatazuke.co.jp/index.html