米、麦、大豆の3種は代表的な携帯用保存食
焼き米は、昔の旅人が持ち歩いた携帯用の保存食です。旅人というと、旅籠(はたご)に泊まってゆっくり湯に浸かって食事をしたような印象がありますが、そんな優雅な旅人はあまりいませんでした。携帯した昼食などは、焼き米を水に溶いて、即席の粥を作って食べた人が多いのです。
これは持ち歩く炭水化物ですが、昔の旅人は、タンパク質も持ち歩いていました。それはきな粉です。きな粉は大豆を煎って、粉末にしたものですから、焼き米と同じ製法だということになります。きな粉はタンパク質の塊で、しかもおいしい食べものです。持ち歩きやすいので、昔の旅人は重宝していました。きな粉は、今でも大変便利な保存食となります。
焼き米のほかには、麦も煎って粉にしました。これを香煎(こうせん)と呼びます。
このように、米、麦、大豆を煎って粉にしたものが、古来から日本人に用いられた代表的な携帯食でした。もし、みなさんが手づくりの非常食を用意しようと思ったらこの3種類の粉末はお勧めです。水分がないので、湿気ないようにすれば5年でも10年でも保ちます。カビもバクテリアも腐敗菌も、水分がなければ発生しないので、乾燥させて粉末にするのは、保存食を発想するときの基本に置いてください。
日本人は古来から、さまざまな方法で米を食べてきました。焼いたものを「焼き米」、 蒸したものを「飯(いい)」(それを干したものが携帯食の干し飯)、煮たものを「粥」といいました。大半の調理法は粥で、現在我々が食べているご飯は、固粥(かたがゆ)に分類されます。
小泉武夫