賢者が選ぶ非常食(5)納豆 その1【小泉武夫・賢者の非常食(70)】

カテゴリー:食情報 投稿日:2019.11.26

 大豆を原料とした加工食品の代表格は味噌と醤油ですが、納豆はこれに続く大豆加工食の傑作です。保存食としても大変優れているので、少し詳しくお話ししましょう。

 納豆にはまったくの製法の違う二つのタイプがありますが、 現在みなさんが食べているのは「糸引き納豆」です。 これは大豆を煮て、稲藁(いなわら)の苞(つと)に詰めて保存し、納豆菌の力で発酵させて作ります。 この納豆を日本人が最初につくり出したのは室町中期のころとされています。当時の『精進魚類物語』には、納豆太郎糸重という武士が登場して活躍する場面があるほどで、 あのヌラヌラした粘り気は1000年も前から日本人を育んできた発酵の産物なのです。

 現在市販されている納豆の多くは、工場で培養した納豆菌を添加して大規模に作られているので、 藁に包まれていません。それでも滋養が豊富なことに変わりはなく、タンパク質やビタミン、ミネラルを多く含み、原料の大豆に比べてビタミンB2が七倍も多いのです。

 

 また、煮ただけの大豆よりも納豆のほうがはるかに消化吸収が速やかであることも見逃せません。

 この糸引き納豆が日本人の食生活にマッチしたのは、粒食(りゅうしょく)民族である日本人の食形態に合っていたからです。粒食民族というのは、主食の米をそのまま粒の形で食べる民族です。これに比べて粉食(ふんしょく)民族である欧米人は、主食の麦を粉にしてそれを水で練り固めてから焼いて食べます。この違いでいうと納豆は完全な粒食型食品なので、やはり粒食である米にかけて食べるのが合っているのです。

 その上、「早飯食い」の日本人が納豆をかけたご飯を掻き込んでも、糸引き納豆にはデンプンやタンパク質を分解する消化酵素がふんだんに含まれていますから、問題はありません。納豆が食卓に定着したことによって、 日本人は主食の米を中心に、味噌汁と納豆という大豆の二大発酵食品を配した理想的な食の形態が完成したのです。(つづく)

 

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編集部
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