日本人の腸が長い理由
紀元前四五〇〇年頃といえば、日本は縄文時代です。そんな昔から肉を食べてきた西洋人は、遺伝子的に腸が短くなっています。食べるものの栄養価が高ければ、腸は短くても十分なのです。一方、日本人はわずか五〇〜六〇年前まで質素なものばかり食べてきました。麦飯や野菜や牛蒡(ごぼう)のキンピラ、豆腐のオカラなどを食べてきたのです。そのため、日本人は赤ちゃんのときから腸が長く生まれくるといわれています。十分な長さがないと、栄養を吸収できないからです。長い腸を持って生まれてくるのは、「さあ、質素なものを食べるぞ」という意思表示でもあります。「高栄養お断り」という体で生まれているのです。
ライオンとウサギの違い
これは、ライオンとウサギの違いに似ています。ライオンとウサギの体重を同じにして比較すると、腸の長さは圧倒的にウサギのほうが長く、ライオンの腸は短くなっています。ライオンは肉食なので食べるものの栄養価が高く、短い腸でも十分吸収できるのです。ウサギは草食なので、繊維質で低栄養のものを消化吸収するために十分な長さの腸がなければなりません。もし、「食べものの栄養価は低いよりも高いほうがいいに決まっている」 という間違った考えのウサギがいたとして、突然肉食を始めたとしたらどうでしょう。そのウサギには悲劇的な結末が待っていることは想像に難くありません。
人間もこれと同じで、肉食系と草食系がいるのです。これは、最近の若者についていわれる肉食系はSEXにどん欲で、草食系はSEXに淡泊だという話とは関係ありません。
体の構造が、民族の過去の生活ぶりを反映して生まれてくるので、食生活を変えてはいけないという話をしているのです。
「でも、草より肉は栄養価が高いのだから、どんどん食べて体を馴らしていけばいいじゃないか」と思う人もいるでしょう。しかし、遺伝子がそれを認めてくれません。
小泉武夫