人間が草食動物ではないワケ
ところで、人間以外の哺乳類、牛、馬、ヤギ、ウサギなどの草食動物はどうしているのでしょうか。彼らもブドウ糖を必要としているので、葉っぱ(草、藁、おがくず、枯れ葉など)を食べて繊維を体内に取り込み、セルラーゼという繊維分解酵素によってブドウ糖を生成しているのです。これは人間にない分解酵素なので、人間は葉っぱを食べてもブドウ糖を作ることができません。
人間が食べるデンプン類は、ブドウ糖が整列した形をしています。それに比べて繊維類は、ブドウ糖が複雑に絡み合った形をしていると考えてください。人間がもし繊維分解酵素を持っていれば、お腹が空いたとき「ちょっと公園に行って草を食べてくるよ」と出かければ済むことになります。それができないので、デンプンの原材料となる炭水化物を主食としているのです。
デンプンを摂る手段
現代の人間は、米や小麦などを栽培してご飯やパンやパスタにして食べていますが、今のように整然と農作物が収穫できなかった昔の人間は、ありとあらゆる方法でデンプンを探しました。おもなものは、雑穀、根茎、堅果の三つのグループです。
雑穀には、アワ、ヒエ、ソバ、キビ、オカボ(陸稲)、ジュズダマ(イネ科の多年草)などがあります。
根茎には、自然薯(ヤマノイモ)、サツマイモ、ジャガイモ、ワラビ(わらび餅の原料)、クズ(くず餅、くず湯の原料)、ムカゴ(ヤマノイモの葉のつけ根にできる珠芽)などがあります。
堅果とはナッツ類のことで、クリ、ドングリ、カヤの実、シイの実、トチの実などがあります。
これら三つのグループのどれかから私たちの祖先はデンプンを摂りました。生きるためにはブドウ糖が必要なので、炭水化物としてデンプンを摂取できるものを探し、ブドウ糖を生成して生きてきたのです。
小泉武夫