若者がなぜキレやすくなったのか
「感情の起伏」度を調べる心理テストがあります。四〇問ほどの質問を行い、もっとも攻撃的な一から、もっとも温厚でやさしい五までのどのランクに位置するか、被験者の心の安定度を調べるテストです。その結果、昭和三〇年代、四〇年代の日本人は平均四・七だったものが、現代の若者は二・七まで下がってきました。それだけ、今の若い人がキレやすくなってきたことがわかります。
なぜそういうことになったのかを考えると、これは日本的食生活である和食を食べていないからという見方があります。和食不足は、ミネラルの不足を意味しています。ミネラルは感情を左右する重要な微量栄養素なので、この不足が若者の心をキレやすくしているというのです。
結局、非常時に摂るべき食材とは…?
ところで、怒るということはどういうことでしょうか。怒るということは、興奮するということです。興奮すると、副腎髄質(ふくじんずいしつ)からアドレナリンが分泌されます。そのときの外見は、 二つのタイプに分かれるのです。ひとつは血圧が上がって顔が真っ赤になるタイプ、もうひとつは血圧が下がって顔が真っ青になるタイプです。どちらにしてもこれはアドレナリンという興奮ホルモンが作用しています。このアドレナリンを出したり引っ込めるのがミネラルなのだそうです。
このことからも、和食=ミネラルの不足は、体の健康ばかりでなく、心の健康までも損なうことがわかっていただけると思います。震災などの究極の場面で生き延びるには、怒りっぽい人は著しく不利です。温厚で冷静沈着な心を持たなければ、ピンチを切り抜けることはできません。
震災の直後から、朝日新聞に「生きていくあなたへ」というリレーエッセイが掲載されました。被災した人々へ向けて、各界から激励のメッセージを書き送るというので、食文化研究者として私も一文を掲載させていただきました。
「江戸時代も、被災者はみそ汁に豆腐と納豆を入れて食べました。そうすれば一杯で一日分のタンパク質がとれます。さらにおむすびに梅干しを入れて食べれば十分元気になれる。
非常時は、日本人が長年食べてきたものが一番体に合い、元気になれるのです」
私は、そのときこのように書きました。災害に備える際の心構えも同じことです。日本人が長年食べてきたものをどう蓄えておき、どう持ち出すか。それが大事なのです。
小泉武夫