魚を海水で煮込む
具体的にどんな食べ方をしてきたのかというと、今でも七〇歳以上のおばぁはみんなできますが、「魚を煮てよ」と頼むと、たとえばアイゴという鯛を小ぶりにしたような白身の魚を用意して、シャッシャッと両面のウロコを取って、腹を割いてワタを出して、水で洗います。それから煮えやすいように腹に切れ目を入れて、鍋に海水を汲んでマース煮にするのです。マースというのは沖縄の言葉で塩のことですから、塩煮ですね。海水がなければ、天然の塩を水で溶いて、海水と同じくらいの濃度にしたものだけで煮ます。そのとき、必ず何種類もの薬草を入れるのです。
本当のラフティの作り方
肉料理だと、代表的なものにラフティーがあります。これは豚の角煮ですが、最近沖縄の空港でおみやげ用に売っているラフティーの多くは脂でぎとぎとしていて、とても医食同源ではありません。本来のラフティーの作り方をご紹介しましょう。
まず、豚の三枚肉を茹でて、茹で豚を作ります。茹でることで余分な脂を落とすわけですが、この茹で汁に豚の耳の繊切りを入れて塩味をつけるとミミガー汁になり、これはこれでうまいものです。さて、ラフティーは茹で豚を適当な大きさに切って、黒糖と泡盛で煮込んだ料理です。二日くらいコトコト煮続けると、表面がべっ甲色に仕上がります。
これが本当のラフティーです。脂なんてないんですよ。箸でちぎれるくらいに軟らかくなっていますから、口に運んで泡盛をちぴりんこ、こぴりんこと飲みながら食べるというわけです。
小泉武夫