和食は野菜
和食の材料はそれほど多くありません。なかには、魚が嫌いだという人もいるでしょう。内陸部で魚が手に入らなかったという人もいるでしょう。そんな人のために、魚を抜いて考えてみるとすべて植物になります(海藻も植物です)。つまり、昔の日本人は究極のベジタリアンだったのです。
これは、私の学説で、世界中の民族のなかで、日本人は極め付きの菜食主義者だったということです。和食から魚を抜けば、お坊さんの食事になりますね。和食というのは、精進料理に魚を足しただけなんです。このことをまず、理解していただきたいのです。
余談ですが私は、きんぴらごぼうだけでご飯を3杯食べられます。ご飯茶碗の上に山ほどのせてグワーッと掻き込んで、お代わりをして、3杯目は唐辛子を足して辛くすると、他のおかずなど何もいりません。
野菜が免疫力を上げる
さて、和食で使われる食材、野菜、それは全部繊維でできています。
繊維というのは、ものすごく体にいい成分です。なぜかというと、繊維質の食べものを摂ると、腸の蠕動(ぜんどう)運動が高まります。腸の働きが活発になるんです。そうすると、どうなるか。その人の免疫力が高くなるんです。人間の免疫の70%は腸で作られているんですから、繊維質を多く摂る人は腸の蠕動運動が活発になり、免疫力が飛躍的に高まるということになります。
この問題に早くから気づいて実践してきたのは、東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎(こういちろう)先生です。藤田先生は、患者さんに和食中心の食生活を勧めたところ、日増しに免疫力が高くなった人が続出したという経験をお持ちです。
それだけ、和食→繊維質→腸の蠕動運動を刺激→免疫力が高まる、という構図は明白です。藤田先生と私は、『カイチュウ博士と発酵仮面の「腸」健康法』(中経出版)という対談集を出しました。和食を取り戻せば腸は強くなり、健康で長生きできるという本です。
普通の食べものは胃や小腸で消化されますが、繊維は消化されません。未消化のまま大腸へ送り込まれます。そこで大腸は繊維質を便にして肛門へ送り出すために、リズミカルな運動を繰り返します。このリズミカルな運動によって、体内に免疫力がドーンと発生するのです。便秘の人が不快な思いをしてうろうろ歩き回っていても、便が出た瞬間に免疫力が飛躍的に高まることはよく知られています。
小泉武夫