食糧の60%は外国から
日本人は、体格だけは大きくなりましたが、たいせつな民族としての食の伝統を失ってきました。その原因はどこにあるかというと、第2次世界大戦の敗戦以来、アメリカに依存した国になったからです。じわじわとアメリカの国策を押しつけられて、スーパーマーケットが増え、アメリカやカナダやオーストラリアから輸入された食べものが大半になって、日本の食料自給率は約40%まで落ちてしまいました。
これは、実は大変なことなのです。食糧の自給率が約40%しかないということは、60%は外国からくる食べものです。このことが何を意味しているか、考えてみてください。これから食べものは「食べるもの」という意味のほかに、「兵器」になってしまうということです。兵器を持たない国は、弱いです。外交をしても強く出られません。60%の食糧を外国に頼っているということは、外国に生命線を握られているということです。国として独立してはいますが、食べものに関しては従属国家でしかない、ということになります。
日本の食糧備蓄量は2ヵ月分?
日本はもともと農業国であり、水産国でした。それが戦後、工業先進国になって、自動車をつくって売り、コンピュータを売り、家庭電化製品を売ってきた。その代わりに外国からも何か買わなければなりません。売るだけで買わないと貿易不均衡といわれるので何かを買おうと思っても、国民は豊かだから自動車も家庭電化製品も持っています。結局、農作物を買うことになり、どんどんしわ寄せが日本の農家にきたわけです。
こういうことで、日本は脆弱(ぜいじゃく)な国になりました。食糧の備蓄が2ヵ月しかないのですから、国際紛争が起こったら大変です。将来、外国から食糧を断たれたら、完全にギブアップしてしまいます。日本は島国ですから、兵糧攻め(ひょうろうぜめ)に弱いのです。 それに、外国に食べものを頼っていると、食の安全が保障できません。何が入っているかわからないものを食べなければならないからです。すると、今の子どもたちの将来は大丈夫だろうかと心配になります。
小泉武夫