本枯鰹節は発酵食品
甘酒以外にも、日本にはカビの性質を利用した素晴らしい発酵食品があります。その一つが鰹節です。ここでは、鰹節の作られ方を中心に、鰹節に込められた発酵の知恵を見てみましょう。
まず、製法をお話しします。鰹節作りは、生の新鮮な鰹を三枚におろすところから始まります。それを煮たものを「なまりぶし」といいます。それを煙で燻(いぶ)したものが「荒節」です。これを舟形に削って整形したものを「裸節」と呼びます。
裸節を四、五日天日で乾燥させてから、カビ付けに入ります。カビ室あるいはカビ桶という鰹節菌が生息する密閉された容器に入れると、二週間くらいで裸節の表面にびっしりとカビが生えます。生えるカビは、日本酒や味噌づくりに使われている麹カビと同種ですので安全な菌です。これが一番カビです。
これを取り出して、晴れた日に外でカビを落とします。表面の胞子を刷毛で丁寧に払い落とし、再びカビ室に入れると、また一週間ほどで表面にびっしりとカビが生えます。この二番カビを払い落し、またカビ室に戻します。昔はこうして、六番カビまで付けることもあったそうです。今では、四番カビくらいで本枯鰹節が完成します。
小泉武夫