【今さら聞けない発酵の疑問(31)】カビから薬が造られている?

カテゴリー:発酵食品全般 投稿日:2022.04.01

微生物の発酵は、さまざまな分野で活用されています。その多くは発酵食品として毎日のように口にしています。アオカビはみかんや野菜など食品の腐敗菌として知られていますが、ゴルゴンゾーラやロックフォールなどの代表的なブルーチーズの発酵菌として用いられています。

しかし、アオカビがお薬を作ることはあまり知られていません。まず、抗生物質です。アオカビを発酵させ、ペニシリンという抗生物質を造ります。ペニシリンは、世界初の抗生物質です。ペニシリンを造るアオカビはペニシリウム(Penicillium)属といいます。そのために学名から「ペニシリン」という名前が付けられました。

ペニシリンは、1928年イギリスのフレミング博士によって発見されました。フレミング博士は、この功績によりノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

博士は、研究室で廃棄する細菌の培地を捨てようとしたとき、カビで汚染されていることに着目しました。細菌がカビの周囲だけが透明で、細菌の生育が阻止されていることを見つけ出したことがペニシリンの発見につながりました。

第二次世界大戦中に、怪我などで化膿した人たちの薬剤として使用され、多くの人命を救ってきました。ペニシリンは、20世紀でもっとも偉大な発見のひとつで、多くの人を救ったことから「奇跡の薬」と呼ばれています。

また、同じアオカビの一種からコレステロール生成を抑制するスタチンという物質も発見されました。同様の物質を麹菌の一種から分離し、コレステロール低下の薬として世界で初めて実用化されたのです。これを開発したのは日本人の農芸化学者(応用微生物学)の遠藤章博士です。現在では多くの市販薬に使われています。この物質のようにコレステロール生成を抑制するスタチン類は、ベニコウジでも見つかっており、機能性食品として販売もされています。

食品の汚染菌として残念なアオカビだったのですが、実は素晴らしい発酵の機能を持っていたのです。

金内誠(宮城大学教授)

 

 

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