【今さら聞けない発酵の疑問(33)】「藍染」は発酵によってできるって本当?

カテゴリー:発酵食品全般 投稿日:2022.05.01

藍染(あいぞめ)は、タデ科の一年草で染められる伝統的な濃紺色の染め物です。藍染めといえば、日本だけでなく、アメリカではブルージーンズでも用いられています。毒虫除けやガラガラヘビ除けの効果があったといわれていましたが、現在では、人工で造った色素であるインディゴという化学物質で染色していることが多いようです。

藍の葉は、紅茶の葉のように発酵と乾燥をさせます。これを蒅(すくも)といいます。この蒅と石灰や木灰汁(もくあく)などとともに約3ヵ月の発酵を行います。石灰や木灰汁は、アルカリ性にするためです。

この時、葉の中に入っている「インディカン」という物質が、「インドキシル」という物資に変換されて、最終的に紺色を呈する「インディゴ」という物質になります。この物質変換には微生物が関わっています。アルカリ性や塩があっても生育できる独特な細菌が生育し、物質変換していることが報告されています。

このような発酵工程を経ないと、独特の藍色にはなりません。

藍の染料の歴史は世界的にも古く、藍染の染料には抗菌効果があるとされるなどの理由から、エジプトのミイラを包んだ布も藍染とされています。

中国では、性悪説を説いた荀子(じゅんし:紀元前300年~200年)が「君子曰、學不可以已。青取之於藍、而青於藍、冰、水爲之、而寒於水。」(君子が言われた「学問は終わったと思ってはいけない。青は藍(の葉)から取り出すが、藍(の葉)よりも青い。氷は水が作り出すが水よりも冷たい」と)。つまり、学問は発展していくのだから、ここで努力をやめず、さらに努力することの戒めを説いておりました。(あるいは出藍の誉れとも、いわれます)。

日本でも、古墳からの織物は、藍で染めたともいわれます。また江戸期、徳島の阿波藩が蒅を利用した藍染を行い、「阿波藍」がブランド化しました。

これらの菌種は、その場所に生育している、家付き・蔵付き・作業場付きの菌種で、職人さんの個性によっても色合いがことなり、味わいを出しているのです。日本の風土に根ざした藍染に注目したいものです。

金内誠(宮城大学教授)

 

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