賢者が選ぶ非常食(3)高野豆腐【小泉武夫・賢者の非常食(68)】

カテゴリー:食情報 投稿日:2019.10.27

 いつ地震が来てもおかしくない日本列島。万一に備え役立つ非常食を確保しておきたいものです。

 これからお話しするのは、日本人にとって理想的な非常食の数々。水とこれら非常食があれば、他の食品なしに何日も自分や家族が、生き延びることができるだけでなく、体と心の健康を保つこともできます。日本人が長い歴史の中で育んできたこれら保存食を「賢者の非常食」と名付け、順にご紹介します。

 

  地球上でもっとも栄養価が高いのは高野豆腐!?

 大豆の加工食品には、味噌、醤油、豆乳、豆腐、納豆、油揚げ、厚揚げ、湯葉などさまざまなものがあります。味噌と納豆は別に項目を設けて詳しく紹介しますので、ここでは高野豆腐のお話をしましょう。

 高野豆腐は別名「凍み豆腐(しみどうふ)」とも呼びます。真冬のよく晴れた夜に薄く切った豆腐を、 外で凍結させ、中から水分を抜く作業を繰り返して、最後に日干しした保存食品です。 名前の由来は、紀州の高野山で作られていたから高野豆腐と呼ばれ、同じものが東北では「凍み豆腐」と呼ばれました。江戸時代には高野山の精進料理や参詣(さんけい)みやげの代表にもなっていましたので、高野豆腐もまた、日本人に長く親しまれてきた大切な民族食といえるでしょう。

 高野豆腐は、地球上でもっとも栄養価の高い食品です。成分の五〇%はタンパク質で、普通の豆腐の四丁分に相当します。脂質は三〇%、ミネラルが豊富、ビタミンもたっぷり含まれていますし、消化がよい上に保存がきき、カビが付いたり寄ったりしないので、日本最初の宇宙食としても採用されているほどです。

 

 災害時の高野豆腐の食べ方とは

 高野豆腐は、普通煮物に使われます。しかし、災害に遭って火が使えないときでも簡単に食べることができるのです。醤油を水で溶き、おすまし程度の濃度にした中に高野豆腐を入れて、五分間ほど浸しておいてください。軟らかく戻った高野豆腐は、煮込んで冷ました料理とまったく変わりません。火がいらないという高野豆腐のメリットは、いくら強調しても足りないくらいです。

 もし「麺つゆ」があれば、水で四倍くらいに薄めた出汁(だし)に高野豆腐を入れ、そのまま軟らかくなるまで戻すと、上品な和風料理ができ上がります。高野豆腐は、戻すだけで調理したのと同じ状態にできるのです。素朴な風味がある上にひんやりとして口当たりが良く夏場などは温めたものよりかえって食欲をそそります。

 栄養価の高さ、保存性や携帯性の良さ、調理の簡単さと、どれをとっても高野豆腐は非常食のチャンピオンです。

小泉武夫

 

 

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この記事を書いた人

編集部
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