ミネラルを摂って元気になる日本人
和食が心の安定に役立つという話をしましょう。大地震や大津波といった人間の力の及ばない天災に出遭ったとき、私たちはストレスを感じます。ストレスに耐えるには、心を強く持たなければなりません。日本人の心を強くしてくれるものは何か。それが和食なのです。
和食という民族食をもう一度思い出してみましょう。根茎類、野菜、青果、大豆、山菜ときのこ、海藻、米、魚です。このなかの七つは植物でした。植物の主食は何でしょう。それは土の中に豊富に存在しているミネラルを主食にして生きているのです。したがって、私たち人間が植物を食べるということは、ミネラルを摂取するということにほかなりません。
植物の三大栄養素は、窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)です。最低この三つあれば育つということで、硫安(りゅうあん)とリン酸カリウムをまいて、うまくもない野菜を作っています。野菜にすれば可哀想な話です。三大栄養素しか与えてもらえないのですから。
水に浮かぶトマトは何がいけないのか
ミネラルは、三大栄養素以外にもたくさんあります。鉄、カルシウム、ニッケル、アルミニウム、マンガン、銅、マグネシウム、ナトリウム、亜鉛など、数えればきりがありません。これらをバランスよく吸収している植物は元気です。昔の日本人は、ミネラルが豊富に含まれている堆肥(たいひ)で野菜を育てました。そのため、生育した野菜もまた、ミネラルを豊富に含んでいたのです。だから、昔のトマトはとてもよく実っていたので水に沈みました。
今のトマトは、水に浮きます。それは化学肥料で育てていて、しかも三大栄養素しか与えていないからです。現代の日本人は、そんな病気のような野菜を食べています。そんな野菜でも食べないよりはましですが、できれば有機農法で育てられた元気な野菜を食べたいものです。
小泉武夫