ミネラル不足で凶暴に!?
食生活が菜食から肉食へと変化し、それに比例して思考や行動も乱暴になっていった、という話をしました(【なぜ日本人はキレるようになったのか】)。おとなしい草食動物と、凶暴な肉食動物の関係を考えれば、そういう説明も成り立つかもしれません。しかし、日本人がキレやすくなったことと、ミネラルの摂取量が4分の1に減ったこととの因果関係は、もっと医学的な根拠に基づいて説明ができるのです。
今から15年ほど前、ストレスのメカニズムを研究していたアメリカの学者が、心の安定にミネラルが大きく関与していることに着目しました。きっかけは、ネズミの実験です。ネズミを二つのグループに分け、人工エサで飼育するのですが、一方のグループにはミネラル成分を抜いたエサを与え続けたのです。
その結果、何が起きたか? ミネラル不足になった方のネズミは凶暴になり、仲間同士で齧り合って、耳が取れたり、尻尾が千切れたりしました。飼育ケースの中を掃除するために人が手を入れると、一斉に群がって噛み付いてくる。ネズミが暴徒化してしまったのです。
和食中心の食生活をすすめる理由
それ以降、ミネラルの働きに関していろいろな研究が進められてきましたが、現在では、動物にとってミネラルは精神を安定させる役目を果たしているということが明らかになっています。
私たちが怒ったり、興奮したりすると、左右の腎臓の近くにある副腎髄質からアドレナリンというホルモンが分泌されます。相手を攻撃したり、物を壊したりといった凶暴な行動に出るときは、大量のアドレナリンが血中に放出されている状態なのです。そのアドレナリンの分泌を抑えてくれる働きが、ミネラルにはあるのです。
日本人は、もっとミネラルを摂らなければなりません。こう聞いて、硬水のミネラルウォーターや、カルシウム豊富な牛乳をガブガブ飲んだところで、ミネラル不足は解消されません。やはり、バランスのとれた伝統的な和食中心の食生活に切り替えることが、ミネラル不足を解消する一番の近道なのです。
だだし、非常に残念なことですが、日本の作物に含まれるミネラルが、どんどん少なくなっているという現実も指摘しておかなければなりません。
小泉武夫
※本記事は小泉センセイのCDブック『民族と食の文化 食べるということ』から抜粋しています。
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