「こぴりんこ」という耳に残る響きの名をもつ日本酒が、ひそかな人気になっている。小泉武夫(当サイト総合監修・東京農業大学名誉教授)ファンならば、“こぴりんこ”に思わず反応してしまうが、もちろんこれは小泉センセイの著書にもたびたび登場するオリジナルの酒を飲むときの擬音。つまり、このお酒、センセイの“こぴりんこ”に由来して名付けられた純米吟醸酒なのだ。
老舗の“手に取りやすい”日本酒
「こぴりんこ」を製造しているのは、幻の酒米「亀の尾」を復活させ、漫画「夏子の酒」のモチーフとなったことでも知られる久須美酒造(新潟県長岡市)。天保4(1833)年創業、日本酒マニア垂涎(すいぜん)の「清泉(きよいずみ)」を看板商品とする老舗の蔵が、遊び心ある印象の日本酒を発売したのは「日本酒に触れる機会がなかった人にも飲んで欲しい」(同社代表取締役社長・久須美賢和さん)という思いからであった。
「こぴりんこ」は、飲みきりやすくテーブルに置いてしっくりくるサイズにするため、300mlと日本酒としては小ぶりに。アートディレクター・浅葉克己を起用して、目を引くユニークなラベルのデザインとした。女性をイメージするひらがなの「こぴりんこ」と男性のカタカナの「コピリンコ」の2種がある(中身は同じ)。
「手にとって、『あぁ、日本酒ってけっこう美味しい』と思ってほしいのです」と久須美さんは語るが、実際に日本酒を飲みそうにない若いカップルが、その名前とデザインに思わず手に取って購入していったり、ユニークなデザインを生かして、結婚式の引き出物にした夫婦もいたという。
蔵をイメージした箱で引き出物として
「妙味必淡(ひったん)」の酒
もちろん、日本酒としては通も唸らせる実力。小泉センセイは、「淡い味わいこそ、忘れ得ぬ本物の味」という推薦文を寄せているが、「燗して旨酒、冷やして美酒。本物の味わいを目指している日本酒です」(久須美さん)
お燗を楽しむならば、キャップを外して瓶のまま湯煎にかける。42~45℃のいわゆる上燗にすれば、米の旨味と甘みが味わえる。冷やならば、18~20℃の常温でじっくり香りと味わいで飲むのもよし、12〜3℃の井戸水程度に冷やしてすっきりとした飲み口を楽しむのもよし。まさに日本の四季に合わせてじっくり味わえる酒なのだ。
日によって気温差の大きい今の時季は、「今日は熱燗、明日は冷やで」と飲み比べてみてはいかが。
取材協力・写真提供/久須美酒造株式会社(http://www.kamenoo.jp/)