「へしこ」に「なれずし」!! 若狭湾(福井県)は発酵食品の宝庫!!

カテゴリー:[PR], 食情報 投稿日:2017.03.30

 日本海にのぞむ福井県の若狭は、「発酵食品の宝庫」というので訪ねました。

 

 御食国だった若狭

 若狭(わかさ)は昔から鰒(あわび)や海草などの食材を奈良や京都に送り、朝廷の食を支えた「御食国(みけつくに)」の一つでした。ほかに志摩(しま、三重県)や淡路(あわじ、兵庫県)も御食国として知られています。

 

 食欲をそそられる食文化館

 若狭の食文化の豊かさの歴史は「御食国若狭おばま食文化館」(石毛直道名誉館長)で知ることができます。2003年に開館し、年間22万人が来館するそうです。海産物や農産物の食品サンプルが展示され、その見事さに食欲をそそられます。

御食国若狭おばま食文化館

 

おいしそうな食品サンプル

 

 京都へと続く鯖街道

 江戸時代になると、若狭湾で鯖(さば)が大量に捕れるようになりました。その鯖に一塩(ひとしお)して京都へ運ぶ道は「鯖街道」と呼ばれました。「京は遠(とお)ても十八里(約70km)」と言われ、早ければ水揚げした翌日には京都に届けたそうです。鯖街道の熊川宿(くまがわじゅく)は最近整備され、レトロな雰囲気が漂っています。

鯖街道の起点は小浜市

 

整備が進む熊川宿

 

熊川宿名物・こんにゃくの唐揚げ

 

 おいしい水の瓜割の滝

 熊川宿から車で10分ほど行くと「瓜割の滝」があります。酷暑の夏でも枯れることなく湧き出る清水は、瓜を割るほど冷たいそうです。環境省の「名水百選」に選ばれ、ポリタンクを持って水汲みに来る人が引きも切りません。豊かな食文化は名水に支えられているのですね。

夏でも涼しい瓜割の滝

 

ポリタンクで水を汲みに来る人も

 

 鯖の「へしこ」

 さて、いよいよ若狭の発酵食品です。訪ねたのは民宿「佐助」の森下左彦さん(74歳)。森下さんが手がけるのは鯖の「へしこ」です。毎年、秋から翌年3月頃までに獲れる旬の脂がのった鯖を背開きして内臓を除き、塩と糠と少しの唐辛子で最低1年以上、桶で漬け込みます。夏を越えることで一気に発酵が進み、糠でタンパク質が分解され、アミノ酸の旨みが引き出されるそうです。

「佐助」の森下左彦さん

 

「佐助」には小泉センセイも訪れた

 

 「40年ほど前に京都から戻って家を継ぎましたが、子どものときから食べていた鯖のへしこが、こんなに旨いものかと改めて気づき、“田烏さばへしこ・なれずしの会”をつくり、普及につとめてきました」と森下さん。今では毎年、2000〜3000本の鯖のへしこをつくっています。

1年以上漬け込んだ鯖のへしこ

 

1cm幅にスライスして七輪であぶる

 

 へしこを1cm幅でスライスし、七輪であぶると脂がしたたり落ちます。飴色に光る一片を噛みしめると、旨みがジュワッと口に広がります。3、4切れをご飯にのせて茶漬けでいただくと、これまた絶品。

酒席の締めはへしこの茶漬け

 

 鯖の「なれずし」

 鯖のなれずしもいただきました。へしこを塩抜きし、米一升と麹5合を混ぜあわせ、へしこに包み入れ、再び桶に入れて重しをすること2週間。ヨーグルトのようにねっとりしていて、口に含むと芳醇な酸味と甘みに包まれます。

米と麹に漬けた鯖のなれずし

 

2週間ほどで甘みと酸味が増す

 

 あえて甘い日本酒をつくる

 次に訪ねたのは造り酒屋の鳥浜酒造です。1922(大正11)年創業、今の当主は5代目の小堀安彦さん(54歳)です。看板銘柄の「加茂栄(かもざかえ)」は創業以来の伝統で甘口のお酒です。というのも、若狭の三方五湖(みかたごこ)という5つの湖で獲れる鯉、鮒など川魚は、臭みを消すために甘辛く濃厚な味つけをするため、辛口のお酒が主流の今も、あえて甘口のお酒を今も造り続けています。そのかいあって地元の鳥浜では、「加茂栄」しか飲まないという人が多いそうです。

小堀安彦さん

 

 「18年前に父が亡くなり、サラリーマンを辞めて家業を継ぎました。しかし、うちのような零細な造り酒屋では先行きがないと思い、当時の町長さんに廃業を相談したら、『それはダメだ。私が許さない』と叱られました」と小堀さん。

創業以来の味の「加茂栄」

 

女性を意識して造った「鳥濱」

 

 「加茂栄」と新銘柄の「鳥濱」を試飲させていただきました。甘さにこだわる「加茂栄」、甘さおさえ気味の「鳥濱」、どちらも日本酒特有の香りがさわやかでした。

 

 名産「福井梅」を使った梅酒

 鳥浜酒造のすぐ隣にあるのが梅酒メーカーの「エコファームみかた」です。三方五湖の湖岸には梅林が広がり、湖面から立ち上る霧がおいしい「福井梅」をつくるそうです。生産量は年間約2000トンで国内シェアは2%ほどですが、種が小さく肉厚なのが特徴。その梅を6月に収穫し、アルコールに漬け込んで1年寝かせると飲み頃に。

新感覚の梅酒を目指して造った

 

 エコファームみかたでは、「BENICHU38°(無糖)」「BENICHU20°(微糖)」「BAIJO(アルコール度数12°)」「BAIJOレモングラス梅酒(同8°)」などの梅酒を年間約3万本つくっています。

 広報の藤本佳志(よしゆき)さん(38歳)は3年前に若狭町役場勤務から転職した変わりダネ。「自らが前面に立って、町の特産を多くの人に知ってもらい、ふるさとを元気にしたくて転職しました」と想いを語ります。

広報の藤本佳志さん

 

 雲丹でつくった醤油の味は?

 1950(昭和25)年創業の小浜海産物の看板商品は「小鯛ささ漬(づけ)」です。小さな連子鯛を3枚におろし、可愛い木樽で塩と酢で漬け、笹の葉をのせています。原型は明治期に小浜の魚屋と京都の料理屋が考案したもので、それを小浜海産物が復活したのです。いまや全国版のヒット商品となり、年間30万樽出荷しているそうです。

木桶にこだわる「小鯛ささ漬」

 

 「もう一つのヒット商品が雲丹(ウニ)ひしおです」と語るのは常務・製品事業本部長の森陽介さん(40歳)です。若狭では昔から魚を使った醤油、魚醤(ぎょしょう)をつくっていました。それをヒントに20年ほど前に雲丹を使った醤油を開発したのです。「当初は売れませんでしたが、14年前に歌手でタレントの森久美子さんが、TV番組でパスタにあえると美味しいと“雲丹ひしお”を絶賛していただいたおかげで注文が殺到し、半年待ちの状態になりました」

濃厚な風味の「雲丹ひしお」

 

森陽介さん

 

 「小鯛のささ漬」と「雲丹ひしお」を賞味してみました。「小鯛のささ漬」は酢と塩が鯛の白身を引き締めて上品な仕上がりでした。「雲丹ひしお」は卵かけご飯にたらし、パスタにはあえていただきましたが、濃厚な雲丹の香りと贅沢感が口中に広がりました。

 

 初夏から秋には天然うなぎ

 発酵食品のほかにも若狭にはおいしいものがいっぱいです。うなぎ料理の「徳右ヱ門(とくえもん)」は120年続く老舗。4代目の田辺清文さん(66歳)が語る。「初夏から秋は三方五湖の天然ものを使いますが、冬から春先は小さいので養殖にしています。こだわりは、身が盛り上がるように関東風の背開きですが、焼きは関東風(蒸してから焼く)ではなく、身が締まる関西風の白焼きです」

肝吸い・骨せんべい付きの「竹うな重」

 

 肉厚のうなぎの蒲焼は脂がのり、ほどよい歯ごたえが心地よい。大阪と京都で修行し、22歳で家に戻ったというご主人に、これまで何匹のうなぎをさばいて焼いたのか質問すると、「1日50匹として46年間ですから……」と言う。その数ざっと80万匹!

田辺清文さん

 

 「福井梅」を使った梅干し

 梅農家の「やまいち」の主力製品はもちろん梅干しです。ご主人の田辺盛昭さん(57歳)と奥さんの敦子さん(53)歳は、6月前後の梅の収穫期は大忙し。毎年6月10日頃から、手伝いを含めて6人がかりで集果と選果を行いますが、梅の木は500本もあるため6月いっぱいかかるそうです。収穫した梅は塩分が18%になるように塩をまぶし、紫蘇(しそ)の葉を加えると、水を加えなくても梅の汁が出て、10月頃には赤く染まって食べごろになります。

田辺盛昭さんと敦子さん

 

 種が小さく肉厚の「福井梅」は梅干しに最適。「サイズは2L、3Lもありますが、一番人気はLサイズ。隠れた人気は梅エキスです。小瓶1本あたり2〜3kgの梅を使い、果汁だけを長時間煮詰めてつくります。若狭では昔から薬として用いされてきましたが、どろどろの血液をさらさらにする効果が確かめられたそうです」と敦子さんが語ります。

塩と紫蘇の葉しか加えない梅干

 

根強い人気の「梅エキス」

 

 創業250年の老舗の焼き鯖

 江戸時代から約250年続く焼き鯖の「朽木屋(くつきや)」の12代目、益田隆さん(65歳)は1日100匹の鯖を焼きます。使うのは600g以上の大ぶりの鯖。背開きして内臓を取り、流水で洗って串に刺し、オーブンで30分かけてじっくり焼きます。店頭には香ばしい香りが漂い、近郊から買いに来る人も少なくありません。

手際よく下処理する

 

 「うちは11月から翌年2月頃に獲れた大ぶりの鯖しか使わない。オーブンで一度に焼けるのは14〜15匹。お盆の頃は1日に200匹出るから、朝から晩まで休む暇もない」と益田さん。外はカリカリ、中はジューシー。脂がのった身はほぐれがよく、鯖を食べたという満足感にひたれる焼き鯖です。

ボリュームたっぷりの焼き鯖

 

地元では知らない人がいない朽木屋

 

 1本で満足する焼き鯖すし

 その焼き鯖を福井県産のコシヒカリにのせて手巻きにしたのが「焼き鯖すし」です。小浜市の若廣(わかひろ)の工場直売所では、ガラス窓越しに十数人の職人さんが「焼き鯖すし」「鯖寿し」「焼あなご鮨」などを手巻きにしているのが見えます。

米の甘みが引き立つ「焼き鯖すし」

 

 「焼き鯖すし」をいただくと、身はほどよく脂がのって、しっとり肉厚。ふっくらと甘いシャリにあって、大満足の1本(8貫)でした。

 

【店情報】

佐助(さすけ)

住所:福井県小浜市田烏36-47

電話:0770-54-3407

通販:へしこ(2150円・税込)、なれずし(2592円・税込)

 

鳥浜酒造

住所:福井県若狭町鳥浜59-30

電話:0770-45-0021

商品:加茂栄上撰(1.8L・1982円・税込)、鳥浜純米酒(720ml・1296円・税込)

URL:www.torihama.jp

 

エコファームみかた

住所:福井県若狭町鳥浜59-13-1

電話:0770-45-3100

商品:BENICHU38°(無糖・720ml・3240円・税込)、BENICHU20°(微糖・720ml・2160円・税込)

URL:www.ecofarm.jp/

 

小浜海産物

住所:福井県小浜市川崎2-1-1

電話:0770-52-1600

商品:小鯛ささ漬(半樽・70g・972円・税込)、雲丹ひしお(390g・2592円・税込)

URL:www.wakasa-marunaka.co.jp

 

徳右ヱ門

住所:福井県若狭町鳥浜44-18

電話:0770-45-0039

メニュー:竹うな重(4000円・税込)

 

やまいち(田辺市三郎)

住所:福井県若狭町伊良積

電話:0770-46-1081

商品:しそ梅干(2kg・3240円・税込)、梅エキス(1620円・税込)

URL:www.tanabe136.com

 

朽木屋

住所:福井県小浜市小浜広峰39

電話:0770-52-0187

商品:焼き鯖(2000円・税込)

 

若廣

福井県小浜市川崎1-3-5

電話:0770-53-3844

商品:焼き鯖すし(8貫・1080円・税込)

URL:www.wakahiro.jp

 

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この記事を書いた人

編集部
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