【歴メシを愉しむ(155)】今日も冷麺の出番

カテゴリー:食情報 投稿日:2024.07.15

毎日うだっている。うだうだ怠けているのではなく、うだりまくっているのである。デジタル大辞泉で「うだる」を調べてみると、「暑さのため、からだがぐったりする」とともに、「<卵がゆだる>に同じ。」とあり、これはもう火傷ものの暑さなのである。

 

冷麺とは冷やし中華のこと

食欲もなくなりがちな日々、冷たい麺類はツルツル涼やかに喉を通ってくれる。そこで冷麺の出番となる。

ここでいう「冷麺」とは、全国的には「冷やし中華」と呼ばれるものである。関西では、焼肉店の平壌冷麺などもひっくるめて「冷麺」と呼ぶ人が多い。他にも特徴的な呼び名は、北海道では「冷やしラーメン」、朝鮮風冷麺の歴史を持つ岩手県盛岡では「冷麺」以外にも「冷風麺」と呼ぶこともあるという。近年では、全国展開のコンビニエンスストアの影響もあり、「冷やし中華」という呼び名が全国に拡大しているが、地方ごとの呼び名は残ってほしいものだと思う。

 

問題は玉子か

うだる中で、冷麺を作ることに抵抗を覚える人もおられよう。確かに、麺を茹で、具材を細長く切るという手間は必要だ。しかし、我が家ではあらかじめガンガンに冷房を効かせておいたキッチンにて、電気ポットで湯を沸かして麺を茹で、その間(約3分間)にキュウリ、トマト、ハムをチャカチャカっと切り、辛子と紅しょうがを添えて、麺つゆ(ポン酢でもよい)をかけて、ハイ出来上がり!なので、あまり苦には感じない。

ざるそばやざるうどんであれば、海苔とネギ、山葵、麺つゆさえあればいいので、もっと手軽である。しかし、キュウリやトマト、パック入りハムという顔ぶれは、冷蔵庫の常備モノとはいえ、海苔とネギのコンビに比べると、彩りと味わいが華やかなため、豪華感が演出できる。ちなみに焼き豚があれば、もっと嬉しい。(笑)

問題は玉子である。何が“問題”かといえば、本日の冷麺には薄焼き玉子を錦糸にしてのせるか、半熟の「にぬき」(大阪で「茹で玉子」のこと)をのせるかで悩むこと。玉子好きには困った問題なのである。

 

冷麺の歴史

ところで、こんな美味なものはいつ頃日本に誕生したのだろう?

第二次世界大戦後に、東京神田の揚子江菜館の二代目当主が、油をからませた蒸しそばを器に盛り、タケノコ、シイタケ、糸寒天、チャーシュー、錦糸卵をのせた『五色涼拌麺』を創作したとする説があり、このあたりが冷やし中華の発祥なのだろうか。

一方、1929(昭和4)年刊『料理相談』に、「冷蕎麦(ひやしそば)」が載っており、そこには、「茹でたシナ蕎麦(中華そばのこと)に、酢、砂糖、氷をまぶす。具材は、叉焼、胡瓜、酢漬けラッキョ、筍で、冷スープ、醤油、酢、胡椒をかける」とある。料理名は違えども、“冷やし中華らしきもの”が料理書に記載された最も古いとものとされている。

 

風情ある 「冷麺 はじめました」

夏の街を歩いている時、店先に、赤色に白抜きの文字で、「冷麺 はじめました」というのれんが、陽炎(かげろう)のようにゆらゆらとはためいているのを見かけると、空腹でなくとも思わず入ってしまうことがある。この赤のれんの風情に魅かれるのだ。結局はお腹パンパンになって、後悔することが少なくないのだが。

玉子で悩む自作の冷麺、赤のれんに誘われる外食の冷麺、この夏もツルツル&ズズズ~っといこう。

歳時記×食文化研究所

代表 北野智子

 

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この記事を書いた人

編集部
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