災害で崩落した酒蔵裏山の修復は、かっての緑豊かな景色を一変! そこで少しでも元の姿に戻せないか…、と相談した結果、日本の桜の代名詞「ソメイヨシノ」を植えることになりました。
すると、その計画を聞き付け、当家の山林を管理していた人物(冬は炭焼き業)が、「裏山に桜を植えるそうで…」と来社。ついては「余計なお世話だが、桜は苗木を植えるように! 苗木であれば時間はかかるが(花見まで)その分1本1本が場所に即した枝振りに育ち、添え木の必要もなくなる」。
加えて「植樹の穴は四角形に! そうすることによって根は四隅に張りしっかり根付く。そうしてほしい」と教えてくれました。
かくして平成18年、ソメイヨシノの苗木25本は社員・蔵人総出の植樹となりました。いよいよ本年裏山の桜も17歳、見頃を迎えます。
花見は古くから、農民がその年の豊作を祈って大自然に感謝する集いとして行われたものだとか。しぼりたてをはじめ、新酒たちそれぞれの生い立ちを見ながら、ひらひら風に舞う花びらを杯に受けて、ゆたかな気持ちで花の宴をたのしんだとのこと。
さらに「春の料理には苦みを盛れ」の諺(健康にいい)もあります。今年の花見の宴では、裏山の新鮮なふきのとうやたらの芽など、ほろにがい春の味を料理し、皆で今冬醸した新酒たちを心ゆくまで酌み交わしたいと思います。
これからも「日本酒は、土地の米と水と人情と自然が醸す風」を基軸にと。
久須美酒造株式会社(新潟県長岡市)久須美賢和
※トップ画像は酒蔵裏山に植樹した25本のソメイヨシノ(2023年4月3日撮影)
文庫版サイズ(厚さ1.2×横10.5×縦14.8cm)
304頁
定価:本体1,800円+税
発行:株式会社IDP出版
ISBN978-4-905130-43-7
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