酒蔵だより(2)“突き破精(つきはぜ)麹”と“出目金麹”

カテゴリー:酒 投稿日:2023.05.03

昔から酒づくりには「一麹・二酛・三造り」の言葉があるように、中でもとりわけ麹づくりが重要です。そして理想的とされるのが「突き破精麹」で、出品大吟醸など高品質な酒造りに用いることにより、あの上品でフルーティーな吟醸香と美味が生まれます。

一方、まだあまり知られていませんが、上述の「突き破精麹」を超える“究極の麹”と云われるのが「出目金(でめきん)麹」です。蒸米に付ける麹菌の数を極力減らし、菌糸を蒸米内部にまでしっかり食い込ませる必要があるため操作が非常に難しく、手作業による繊細で高度な技術を要します。農学博士・戸塚昭先生の研究によりますと、「出目金麹」に仕上げることで“ある成分”が生成され、これが上槽後の原酒に残り、香りや味に大きく関与。結果、新酒でも充分に美味しい上に、日を追うごとに一段と香りが立ち、味にコクが出て来るそうです。加えて、酒自身に力があるため過剰な低温管理に頼らずとも劣化しにくく、ひいては長期貯蔵・熟成することで(瓶詰後の製品であっても酒質が向上)得も言われぬ妙味へと変化し、料理の味を一層引き立てます。正に「伝統的酒造り/登録無形文化財」の経験と知恵で醸す日本酒は環境にも優しく(“しぼりたて”を除き、10月~3月の間は光を避ければ常温管理で充分)、世界に誇れる究極の食文化と言えるでしょう。

今年2月、当社のフェイスブックページに、愛酒家の方から「平成25年に『亀の翁3年熟成』を購入。その後、わが家の冷蔵庫で約10年寝ていましたが、昨年末、遂に王冠を開けました。そして知り合いのBarのマスターや酒屋さんと美味しく頂きました。全く老(ひ)ねてなく、まだ置けたかもね、と話しました。本当に良いお酒ですね」、とのうれしいコメントが届きました。

3月25日は地元のテレビ番組で、新潟駅南地区にて県産酒を主体に販売されている酒販店さんが、「新事業・角打ち」についての取材を受けました。その“角打ち”場面で、料理がお得意な奥様が、料理と酒のペアリングを紹介!丁寧に出汁をとって作られた料理に、何と『清泉・完熟のぬる燗』を漆器の盃に注ぎ薦めてくださいました。女性のレポーターにも「このマリアージュ…両方の旨みが倍になる!」と大好評でした。

以上のことからも「亀の翁3年熟成同様」、1月にビン詰めした「完熟・2種類」もこれからが飲み頃です! お好みのかたちで楽しんでいただければ幸いです。

 

久須美酒造株式会社(新潟県長岡市) 久須美賢和

 

※冒頭の画像は「出目金麹」です

 

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編集部
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