とうとう今年も続いたコロナ禍で、酒蔵のめでたい春の行事「コシキ倒し」に恒例の“夜を通しての祝宴(うたげ)”は、残念ながら叶いませんでした。
それでも3月22日は待望の「コシキ倒し!」。半年間の蔵人たちの苦労が実を結び、当日は蔵人・社員16名で、酒蔵の2階にまつられた酒造りの守護神松尾様に手を合わせ、総ての仕込みを無事終えた報告をし、労をねぎらい、共に赤飯と折詰で喜びを分かち合います。
そして25日4名の蔵人が、酒蔵入口にある遅咲きの古梅の香りに送られ家路に着きます。が、彼らは間をおかず新たな酒米作りにとりかかります。正に酒造りは、「土地の米と水と人情と自然が醸す風」であり、日本一の米どころ雪国・越後にある酒蔵ならではの早春の嬉しいひとコマです。
【甑(コシキ)倒し】酒造りが最終段階に入って、最後の醪の仕込みが終わると、米を蒸す甑が不要となるので、甑を横に倒して洗うところからこう呼ばれている。この日は、どこの蔵でも、その年の造りが無事終了したことを喜んで祝宴を張る風習がある。
久須美酒造株式会社(新潟県長岡市) 久須美賢和