老舗の酒蔵に新たな銘酒が!
久須美酒造がまたも通を唸らせる酒を発売した。30年熟成の純米大吟醸「亀の翁 くらしっく30年熟成」。日本酒では珍しい古酒だ。
久須美酒造は天保4(1833)年創業の越後の老舗、幻の酒米「亀の尾」を復活させ、漫画「夏子の酒」のモチーフとなったことでも知られる酒蔵だ。今回発売される古酒も「亀の尾」を酒米としている。
「亀の尾」は、昭和55年にたった1500粒の種籾から3年がかりで復活させたもの。「亀の尾」を酒米に、久須美酒造の看板とも言える酒「亀の翁」が誕生した。亀の尾復活に尽力した先代社長の久須美記廸さんは、当時はじまりかけていた生酒ブームから、いずれ日本酒の世界に逆の発想の“熟成”を楽しむ時代が来ると見越して、酒蔵裏山の深さ約25mの穴蔵に酒を保管したのだ。
ただ、「亀の翁 くらしっく30年熟成」は一般的な日本酒の古酒とは異なるという。「日本酒の古酒は、色が茶色や赤っぽくなり、香りにも老香(ひねか)が強く生じてしまうもの。しかし30年熟成の亀の翁は、黄金色でにごりもなく、スキッとしています。そして高級ブランデーにも似た、奥の深い香りがするのです」(久須美酒造代表取締役社長・久須美賢和さん)
長期の熟成で美味くなる“日本酒”
その秘密は、酒の仕込みにある。美味い古酒をつくるためには、ただ美味い酒を保存すればいい、というものではない。例えば、フルーティな香りが特徴の大吟醸酒は、絞りたては華やかなよい香りがしていても、時とともに香りが悪くなりやすい。
「古くから日本酒の仕込みには『一麹・二酛(もと)・三造り』が大切だと言われていますが、特に麹にこだわりました。突き破精麹(つきはぜこうじ)といい、昔ながらの麹蓋を使った職人の手作業で麹づくりを行うもの。これで仕込んだ“しっかりとした酒”でないと、長期間の熟成に耐えられないのです」(久須美さん)
仕込み水に新潟県名水の湧水を使い、劣化させずに長期間保存するために、光や湿度、温度変化の少ない“穴蔵”という優れた貯蔵庫の果たした役割も大きい。
スタイルを選ばない、奥深い妙味
その味は「今までの日本酒や古酒とはまったく違う、えもいわれぬ味」(久須美さん)だという。和食はもちろん、洋中華、そして高級なチョコレートや和菓子にもよく合うという。「日本酒の固定概念を取り去った方が、楽しみが広がるかもしれません。雪国・越後の自然に育まれた奥深い妙味を、ぜひご賞味頂ければと思います」(久須美さん)
純米大吟醸「亀の翁 くらしっく30年熟成(穴蔵貯蔵)」
・原料米:亀の尾
・仕込水:新潟県名水指定の自家湧水
・精米歩合:50%
・アルコール度数:16
・355ml:9,000円(税抜き、化粧箱入り)
・発売時期:2017年1月24日(火)
取材協力・写真提供/久須美酒造株式会社(http://www.kamenoo.jp/)