このところ気が付けば、ほぼ5日に4日は山菜の炊き込みごはんを食べている。その5日間の内訳はこうだ。
例えば夕食にわらびごはんを炊いたら(2人分・3合)、無論その日(1日目)に食べる。我が家は、朝はパンかヨーグルト、昼は外食やめん類が多いので、ほとんど夜にしか米を食べない。ゆえに昨日炊いたわらびごはんは、次の日の夕食(2日目)にも食べて完食となる。3日目はちょっと間を開けようと、白ごはんを1合だけ炊いて、その日のうちに完食する。4日目にはまた山菜の炊き込みごはんを炊く。そして次の日(5日目)もまたそれを食べる…と、これがここ2ヵ月ほどの、炊き込みごはんローテーションである。
葉っぱも美味しい山ふき
そして、本日のローテーションはふきごはんを炊く日である。このふきは、毎日罠見回りをしている農園にワッサワッサと自生している山ふきである。農園の方から、「どんどん採っていって」と言われており、罠道具として身に付けている剪定バサミでチョキチョキと収穫させてもらっているのだ。
春風にゆらゆらとそよいでいる大きくて鮮やかなグリーンのふきの葉は、見ているだけで清々しい気持ちにしてくれる。ふきの葉は、細かく切ってさっと茹でて水切りし、じゃこやあみえび、ミンチ肉などとカラカラと甘辛く炒め煮にする。独特の芳香とほろ苦さ、シャキシャキの歯応えがたまらなく美味で、炊き込みごはんの合間に炊く白ごはんの友として最高である。常備菜としてどっさり作るのだが、ほぼ一度の食事で無くなってしまうのだ。
たくさん作らないように要注意
しかし、炊き込みごはんとは、なぜこんなに美味しくて、飽きないのだろうか。
炊き込みごはんなるものが庶民の味として流行したのは江戸中期らしい。寺社の参道や行楽地などの茶屋や飯屋が茶飯、菜飯などといった炊き込みごはんを出して、人々の人気を得て、広まっていったとか。
しかし、炊き込みごはんは、本来は貧乏食であったというから驚きである。思うに、大根や蕪の葉や芋などを米と一緒に炊きこめば、米の量が少なくてすむからであろうか。あるいは、今回の山ふきのように、わらび、つくしなど、野山で自生するものを摘んできて米と一緒に炊きこめば、お金がかからず、おかずもいらないので、安上がりだったからだろうか。何にせよ、こんなに美味しいものを発明してくれた先人には、お礼を言いたいと思う。
ふきの炊き込みごはんを作る時には要注意事項がある。それは、あまりに美味しいからといって、ふきがどっさりあるからといって、たくさん仕込まないようにすることだ。この頃なんとなく小太りになっているように思えるのは(コワイので体重を測っていない)、魔の炊き込みごはんのせいに違いない。ああ、山菜の時季が終わってほしくないような、終わってほしいような…。
歳時記×食文化研究所
代表 北野智子