如月二月の異称は「梅見月」。梅が見頃になる時季である。見逃してはなるまいと、先日大坂城公園へ梅見に行ってきた。天守閣に近い梅林には、100種以上・1200本ほどの梅の木があり、3月中旬まで楽しめるという。
真っ白な梅、真紅の梅、薄紅の梅が咲き誇り、それは美しかった。
その昔 花見の主役は梅だった
昔から日本人は、厳しい寒気に耐え、凛と咲く梅に魅せられ、気高い精神を養ってくれるとされるその香りとともに、梅を愛でる梅見を楽しんできた。
春に先がけて咲く梅には、「春告草(はるつげぐさ)」という異名があり、また、梅の開花が春の到来を告げる暦になるところから「梅暦」ともいわれた。
梅は奈良時代以前に中国から伝わったそうで、その香りや風景を愛でて、『万葉集』など多くの歌に詠まれてきた。当時の貴族たちはこぞって梅花を愛でるための観梅の宴を開いたのだとか。
現代では、花見と言えば桜であるが、平安時代に入るまでは、梅の花が尊ばれたという。なるほど、ゆるゆると暖かい春に桜を観る花見とは違って、寒い中での梅見は、ひと味違う趣きがある。
梅見の後の梅焼きは格別な味
食いしん坊の私は花より団子、花見の一番のお楽しみは花見弁当だが、あまりの寒さに負けて、梅見帰りに一杯飲むことにしようと、そそくさと帰路についた。
もちろんお目当ては、関東煮(かんとうだき)屋=おでん屋である。寒いからということもあるが、それはなぜか?もちろん、大阪名物「梅焼き」を食べたいからなのである。
この「梅焼き」、関東の人は馴染みが無いかもしれないが、昔から大阪人がおやつ感覚で親しんできた梅形の練りものである。魚のすり身に卵を混ぜ込んだものを梅形の枠に入れ、鉄板の上で一つ一つ焼き上げたもので、いつ頃登場したのかは定かではないが、相当に歴史がある。
ふんわかとした食感、ほのかな甘みがクセになる美味で、私も幼い頃から大好きな懐かしの味である。
梅焼きは、そのままを山葵醤油で食べても美味しいが、関東煮に入れるとその美味しさは数倍に膨れ上がる。
熱々の出汁を吸ってぷっくりと膨れ、関東煮の鍋でぷかぷかと浮いている、⼤阪弁で「やらこうなった(やわらかくなった)」梅焼きを見ると、頼まずにはいられない。それも最低2~3度は注文。
というわけで、寒さをものともせず凛と咲く梅を観て、私もかくありたいと感じ入ったのも束の間、ぷわんとしたほかほかの梅焼きでしめくくった、大阪人の梅見であった。
歳時記×食文化研究所
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