【歴メシを愉しむ(132)】ゆく夏のタコブツ

カテゴリー:食情報 投稿日:2022.08.28

蒸し蒸しの夏も気づけば日暮れが早くなっている。もう8月が終わりに近づいていると思うと、一抹の寂しさも覚える。

酷暑の日々、手を変え品を変え暑気払いの一品をいただいてきたが、ゆく夏を想い、この夏お世話になった一品をしみじみ味わってみたいと思う。

 

夏場のタコを好む大阪人

「暑気払い」とは、「夏の暑さを払いのけること」「暑さ避けのための方法を講じること」。私の暑気払いは断然食べものであるが、打ち水、すだれ、風鈴、浴衣、花火などを思い浮かべる風流な人もおられるであろう。私同様、暑気払いは食であっても、冷奴、枝豆、そうめん、鰻、焼肉、スイカ、かき氷、ビール、レモチュー、麦茶などなど、人それぞれに暑気払いの食べものがあり、飲みものがある。

さて、私の「さらば夏!」のしみじみ膳は、タコブツと冷酒でいこうと決めた。大阪の夏の美味・鱧ちりも捨てがたいが、タコブツはもっと普段着のおかずというか、しみじみ味わうにふさわしいと思う。

昔から大阪人はタコ好きで、年中食べてはいるが、特に夏場には暑気払いとして食してきた。天神祭のごっつお(ご馳走)としても欠かせないもの。

中でも、茹でたタコをブツ切りにしたものを略して「タコブツ」と呼び、好まれてきた。タコは斜めに薄く切るよりも、繊維を直角にブツ切りにした方が旨い。このタコブツ、わさび醤油を付けても美味しいが、大阪では酢味噌で食べる人が多い。私もずっと酢味噌派である。タコの肉質はムッチリしていて、噛むと旨みと甘みがムチムチと湧き出てくるのだ。

 

タコ伝説あれこれ

その昔、北陸地方では蛇が海中に入ってタコになるといわれ、ただしその足は7本以上にならないということで、7本足のタコは食うなとの伝承があったり、津軽では大ダコが牛を捕ったとか、佐渡では馬を捕まえて乗り回したとか。大阪にも有名な伝説があるので紹介すると、だんじり祭で有名な岸和田には蛸地蔵という駅があって、この名前の起こりが面白い。時は天正年間(1573~92)、岸和田城が根来・雑賀(ねごろ・さいか)の衆に攻められ落城寸前というその時、にわかに嵐が起こり、沖から大ダコに乗った荒法師と数千のタコの軍勢が押し寄せて、敵軍をなぎ倒し、城の危機を救ったという。その数日後には城の堀からはあちこちに傷を負った地蔵が見つかったことに由来しているとか。これらは城内に収められた後、天性寺(岸和田市)に祀られているという。

見た目はグロテスクでも、どこかユニークさがあるタコには様々な伝説があって愉快だ。

タコブツ酢味噌のほか、タコブツを酒と醤油と砂糖で煮付けて冷やしておいた冷やしタコ煮、キュウリと酢で和えたタコとキュウリの酢もみも、夏にピッタリの一品である。

秋になるとタコがなくなるワケではないが、ゆく夏を見送る膳にはこれらタコブツメニューと冷酒で晩酌といこう。

歳時記×食文化研究所

北野 智子

 

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