【歴メシを愉しむ(124)】おじやうどんをフウフウ

カテゴリー:食情報 投稿日:2022.02.28

 

罠猟師の日課として、1日1回の罠見廻りがあり、毎朝 車で出かけている。猟期に入って早や4ヵ月目、日の出前の薄暗い朝の早起きにも、起床時の寒さにもやっと身体が慣れた頃に、猟期が終わってしまうのがくやしい(兵庫県の猟期は3月15日まで)。

 

冷え切った身体を温めてくれる大阪名物

朝の見廻りを終えて家に戻り、防寒のためにこれでもかと重ね着した猟師ウェアから日常着に着替え、罠日記を書き終えるとすぐに昼ごはんの時間となる。

さあ、このところ昼のお楽しみメニューとしてハマっている、冷え切った身体を芯から温めてくれる大阪名物の「おじやうどん」でも作ろう。

「おじやうどん」の「おじや」とは「雑炊」のことで、「じや」は、「煮える」音を表した女房詞(ことば)だという。平たく言うと、「おじやうどん」とは、「雑炊入りうどん」なのである。

昆布と鰹節のうどん出汁に、うどんとごはんを入れて、なべ焼きうどん風に煮る。海老や焼穴子、蒲鉾、椎茸、菊菜などを入れた具だくさんヴァージョンもあるが、私がお昼に ちゃちゃっと作るおじやうどんの具は卵と蒲鉾のみ。グツグツと煮えてきたところへ溶き卵をチャ~ッと流し込んで丼へ。蒲鉾と薬味のねぎをのせ、熱々のところをフウフウしながら、いただくのだ。よくよくフウフウしないと、唇や舌をやけどしてしまうので要注意である。

 

戦時中に生まれたうどんの名品

おじやうどんは、大阪ミナミで明治26年創業、きつねうどん発祥の店・松葉屋(現うさみ亭マツバヤ)が創作したという。一見 鉄鍋に入ったなべ焼きうどん風だが、うどんとごはんが半々に入って、上には穴子、かしわ、椎茸、蒲鉾、薄揚げ、ねぎ、甘酢生姜、中央に生卵を落とした豪華版だ。おじやうどんの原型は、食材が入手しにくい戦時中に、手に入る材料を混ぜ込んで誕生したという。満腹感が得られるようにと、うどんとごはん それぞれ半々を使い作られたのだとか。終戦後もお客からの要望で復活したといわれている。

 

大阪人好みの主食×主食の一品

うどんとごはんという、「主食に主食」「炭水化物に炭水化物」の組み合わせは、いかにも大阪人好みの一品だ。

おじやうどんをさらに旨くしてくれているのは、大阪が誇る出汁文化の妙味が余すことなく味わえることだ。最後の一滴まで飲み干したい大阪のうどん出汁を、うどんとごはん2種同時に味わえる贅沢感と幸福感に、酔いしれてしまう一品である。

まだまだ寒い如月二月、簡単に作れて、身も心も温めてくれるおじやうどん、ぜひお試しを。

歳時記×食文化研究所

北野 智子

 

 

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編集部
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