味噌は、タンパク質が多いために滋養効果が高く、古くは戦国大名の戦略物質でありました。そのために、有力な戦国武将がいるところには、おいしい味噌があるのです。
例えば甲斐の武田信玄には「信州味噌」があります、ライバルの上杉謙信には越後味噌があります。また、奥州の雄といわれた伊達政宗には、仙台味噌があります。また、天下統一を成し遂げた徳川家康は、三河国の岡崎城で生まれました。この岡﨑にあるのが八丁味噌です。もともと八丁味噌は、岡崎城から西の方角へ八丁(現在の距離で870m)離れた八丁村(岡崎市八帖町)でつくられた味噌です。これが名前の由来となりました。
八丁味噌は、大豆で麹を造り、仕込まれるものです。つまり、大豆のみで造られる味噌なのです。大豆には、豊富なタンパク質の他に、イソフラボン類、血圧の上昇を抑制してくれるペプチドやニコチアナミンという物質も含まれています。イソフラボンは、女性ホルモン様の働きをもつことが知られています。そのため加齢の女性に対しての乳がんリスク低減が報告されています。さらに男性でも、前立せんがんのリスク低減の報告もあります。徳川家康は、医学や漢方に通じていたともいわれていますが、経験的に味噌が健康に良いことも知っていたのかもしれません。
現在、八帖町には江戸時代初期から八丁味噌を造り続けている味噌屋さんが2軒あります。昔ながらの製法で「木桶、石積み、二夏二冬」で仕込まれています(豊田市の野田味噌〔枡塚味噌〕も同様の製法を行っている)。
ちなみに信州味噌は、全国の味噌のシェア46%で、長野県の味噌の出荷額は全国1位です。また、信州味噌のような米麹を使った米味噌はシェアの8割を示しています。武田信玄は、天下統一はできませんでしたが、味噌の世界では天下統一、近年では世界へも進出しています。
金内誠(宮城大学教授)
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