【歴メシを愉しむ(119)】「愛し懐かし ポールウインナー」

カテゴリー:食情報 投稿日:2021.11.12

前回、赤ウインナーについての想いを記したら、その懐かしい味がこれまた大好きなポールウインナーについても書かずにはおられなくなった…ということある。

呑み屋でこれを見つけたら、絶対に注文してしまうアテである。呑み屋と書いたが、大抵そこは酒屋がやっている立ち呑みカウンターである。

 

酒屋のカウンターで出合うポールウインナー

私は、店内に立ち呑みスペースを設けている酒屋の前を通ったら、それが仕事中であれば泣く泣く諦めはするものの、仕事が終わった午後や夕暮れ時であれば、素通りできない性分である。時代を感じさせる酒屋、あるいはメニューが乾きもの中心である酒屋の立ち呑みのカウンターでは、嬉しいことにポールウインナーに出合う率が高い。そのような店のポールウインナーは、レトロなQBBチーズ缶に入れてあることが多いが、これまた昭和であり、気分なのである。

出合ってしまうと、まずはポールウインナーで最初の一杯を飲むことになる。私の場合、ポールウインナーでスタートすると、その後は惣菜系のアテではなく、6Pチーズにクラッカー、サバ水煮やサンマ蒲焼の缶詰など、いかにも酒屋の立ち呑みらしいアテを満喫しながら、お酒を呑みたい性分である。

ポールウインナーの、ギッチリとした肉感の歯応え、深い旨み、幼い頃からおやつや小腹が空いた時、いつも食べていた安心感のある懐かしの味わいは、到底1本だけではおさまらず、QBBチーズ缶から2~3本はつまむことになるのである。

 

関西人の冷蔵庫には欠かせない存在

ポールウインナーは、大阪で創業した伊藤ハム(現在本社は兵庫県西宮市)が1934(昭和9)年に発売したロングセラー商品である。全国に数か所ある工場の中で唯一、西宮で作っているせいか、販売の90%以上が関西に集中しているという。関西人の冷蔵庫には欠かせない存在と言われた由縁である。

そういえば20年以上も前、東京出張の折に、よく友人宅に泊まって夜中まで飲んでいた。勝手知ったる彼女の家の冷蔵庫をゴソゴソと物色しながら私が、「ポールウインナーとか何かないのん?」と訊いたら、「何、ソレ?!」という返事がきて驚いたことがあった。大阪人の私は、全国の人々の家の冷蔵庫に、ポールウインナーがあると思い込んでいたからだ。十数年前にTVで紹介されて以降は、関東などでも知る人が増えたらしいが、当時は、冷蔵庫を開けるだけで即、美味しいポールウインナーを食べられる状況にない彼女に心から同情した。それゆえ、その次に東京へ行く際、10本入のポールウインナー袋を5つほど担いで行ったのであった。

 

串カツにしてもよし

このポールウインナー、赤ウインナーと同様に衣をつけて揚げても美味である。大阪ミナミの道頓堀に、小体な店ながら古き良き風情と清潔感、丁寧な仕事と美味なメニューに魅かれてよく通った串カツと鍬焼きの店がある。

初めて行った時に感動したのが、お品書きに、「ウインナー」とあり、なんと嬉しいことに、ポールウインナーの串カツなのであった。これがまたウイスキーの水割り(濃いめ)とよく合い、必ず2回は注文したものだった…と、ここまで書いてきて、すでに心は我が家の冷蔵庫で待っているポールウインナーに飛んでいる。

今宵は、フライパンで2~3本、ちょいと炙って、ウイスキーの水割りと始めよう。飲んだ後には、ポールウインナーをたっぷりと入れた焼き飯でシメるのも良すぎるな。なんせ10本入りなので、安心して食べられるのが嬉しいのである。

歳時記×食文化研究所

北野 智子

 

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この記事を書いた人

編集部
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