引き続き、家呑みでわかったことを記そうと思う。今回のテーマは、郷愁をそそられる赤ウインナーである。
私は、居酒屋、立ち呑み屋、串カツ屋など、その店のメニューに赤ウインナーがあれば絶対に注文してしまう、赤ウインナーファンである。
懐かしさがもたらす味わい
普段の買物でも、スーパーの棚に並んでいるのが視野に入ると必ず買ってしまう赤ウインナーであるが、ではどこがそんなに好きなのだ?と問われると、ちょっと困る。こう言っては赤ウインナーに悪いが、その味わいは「美味だ!」と叫ぶようなものではなく、どちらかといえばチープで、深みもあまり感じられない。いや、しかしである。そのチープな味わいがまた気分なのであって、昭和なのだ。きっと私にとっては、懐かしさがもたらす旨さなのだろう。
塩だけで炒めるのが定番だが、黒胡椒を加えたり、チョロリとカレーパウダーを振りかけたり、ウスターソースをかけてもよい。衣をつけて揚げるとまたよろしい。
私の愛する大阪の老舗串カツ屋に赤ウインナー串があったが、いつからか普通のあらびきウインナーになってしまったのが残念でならない。
赤ウインナーには何を飲むべきか
赤ウインナーで飲むお酒は、ウイスキーが一番だ。角を筆頭に、ブラックニッカ、トリスなどが気分である。日本酒ならば純米吟醸などではなく、「清酒」と記された、主に醸造酒を常温で。間違ってもモヒートやギムレットなどには合わせない。
それは何も赤ウインナーがチープだという意味合いではない。いや、赤ウインナーはそんなに安くはない。コスパから言えば、特売で売っているあらびきウインナーやフランクフルトの方が安いのではないか。
要するに懐かしさを感じさせる赤ウインナーに似合うのは、どこか懐かしい昭和の香りをまとうお酒だと思うからである。
日本人のお弁当 永遠の人気もの
赤ウインナーの誕生についてははっきりとしていない。戦後の昭和中期に作られた日本独自のものであること、当時は良質の材料を使用できなかったので、発色の悪さを隠すために赤い色のケーシングを使ったということのようだ。
見た目を美味しそうにするために赤色で覆うとは、現在ではありえない感覚だが、かえってその事が、後々お弁当のおかずの人気もの「たこウインナー」として、多くの日本人を喜ばせ、懐かしの食べものとして、人々の心に残ることができたのであろう。
私も幼稚園の頃から、小さなお弁当箱(確か「三匹の子豚」の絵だったと記憶している)に、赤ウインナーを詰めてもらっていた。たこウインナーにすると場所を取るので、ナナメ包丁を入れて炒めるのを好む、本数重視派の可愛げのないおチビであった。
この赤い色を嫌がる人もいるが、現在の赤ウインナーの着色料は植物など天然由来のものが多く、そうそう 身体に悪い!と、目くじらを立てなくてもよさそうである。
家のテーブルに赤ウインナーがあるだけで、そこは居酒屋であり、立ち呑み屋となり、フライにすると串カツ屋となるのだ。その時に、先述のお酒たちが無ければ台無しとなるので、準備を怠らないようにしたい。
ああ、我ながらなんという安上がりな酒呑みであろうか。けれど案外そんなご同輩が、そこここにおられるに違いない。
歳時記×食文化研究所
北野 智子
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