黒い食べものについて、以前、『美味しい夏土用と土用の丑の日』でも少し触れたが、今回は秋初めにやってくる“秋バテ”の時に食べたい黒い食べものの話である。
いまだ残暑を感じるこの時季は、夏に溜まった疲れで、秋バテになる頃でもある。
昔から、黒いものを食べると元気が出る、精がつくといわれ、「黒い食べもの信仰」とも呼ばれていたそう。「黒い食べものを食べると夏負けしない」という夏土用の謂われもあり、土用丑の鰻はその象徴的なもの。
待ちに待った秋を快適に過ごすために、黒い食べもので身体に元気をあげたいものである。
楽しんで食べたい黒い食べもの
この「黒い食べもの信仰」は、日本に多い民間信仰の一つであろうから、難しく考えずに楽しみながら食べたい。
黒い色の食べものが、違う色、例えば白い色の食べものより健康に良いということが言いたいのではなく、黒い色の(あるいは黒いとされる)食べものには、身体にいいものが多いね、という認識だろう。
「黒米VS白米」「黒ごまVS白ごま」「黒砂糖VS白砂糖」…の話ではないのだ。
目や背が黒く、肉が赤黒いことから本来、「真黒」と書くとされるまぐろに、秋に旬を迎える戻り鰹、鰯は、DHA、EPAも豊富。他にも鰻、しじみ、どじょうなど。
以下、昆布、ひじき、海苔、黒胡麻、きくらげ、茄子、ごぼう、こんにゃく、蕎麦、黒豆、黒糖などなど、それぞれにミネラル、食物繊維、ビタミンDやE、ポリフェノールなど身体に嬉しい成分を持つ黒い食べものだ。
秋の黒づくし美味膳
真黒の造り、戻り鰹のたたき、一夜干しの鰯の塩焼きをアテに、酒器は黒土物の片口に、黒楽のぐい吞みで黒づくし。さらには、酒は名酒の和歌山「黒牛」や福井「黒龍」のひやおろし、と来た。(笑)
そうそう、ひやおろしのお相手には新そばのざるも嬉しい。
食事は、ごぼうとひじきとこんにゃくのきんぴら、秋茄子の味噌汁、海苔と黒胡麻のおにぎり2種に昆布の佃煮を添えていただくのはどうだろう。
おやつには、黒豆の甘納豆やおかきに焼き菓子、黒糖は懐かしいかりんとうや麩菓子も美味しそう…と、秋バテなどどこ吹く風の食欲に、我ながらちょっと呆れてしまうのである。
歳時記×食文化研究所
北野智子