【歴メシを愉しむ(53)】
嬉し懐かしナポリタンでお家GW

カテゴリー:食情報 投稿日:2020.04.29

GW最初の祝日は「昭和の日」(4/29)。昭和の時代は「天皇誕生日」を祝う祝日で、後に「みどりの日」となり、次いで「昭和の日」となった。この日は、「激動の日々を経て復興を遂げた昭和の時代を顧みて、国の将来に思いをいたす日」とされている。

昭和時代の戦争や原爆投下、終戦後の復興を経て高度経済成長など、「昭和の日」には、こうした激動の日々を経て、現在の平和な日々があることに思いを馳せ、それを忘れず、今の生活に感謝をしようという意味が込められているとされている。

そして令和2年の現在、世の中は平和な状況ではなく、第三次世界大戦ともいわれる見えない敵との闘い中だが、あまり不安になり過ぎたりせずに、「美味しく楽しむお家GW」のスタートを切ろうと思う。

 

昭和の懐かしの味といえばナポリタン

現在の多くの人にとって昭和の時代とは、懐かしく思い起こされ、特に食に関しては若い世代にも好まれているものが多い。そこで「昭和の日」をきっかけに、「美味しく楽しむお家GW」には懐かしの料理を作ってみたい。

スコッチエッグ、コンビーフサンド、オムレツ、ピロシキ、カレー粉まぶし鯨ステーキ、ポールウインナー…などなど私にとっての懐かしの食べものは多々あれど、時々無性に食べたくなり、一旦そのスイッチが入ると、原稿の締め切りが迫っていても、速攻で「ハイ、休憩!」と打ち切り、台所に駆け込んで作ってしまうのがナポリタンだ。この無性的食欲求と、食べるとほっとして、心のうちがほわんと温かくなり、嬉しさが込み上げてくるのが、懐しの食べものなのだ。

 

ナポリタン発祥の地は…

スパゲッティ・ナポリタンの発祥の地は、横浜のホテルニューグランドとされている。戦後の昭和20年、進駐軍(GHQ)が接収・滞在していたこのホテルの総料理長が、米兵のために考案したと伝えられている。戦後の食糧難の日本のこと、アメリカ側は滞在中の食事のために膨大な量の食材を持ち込み、その中にあったスパゲッティやケチャップでスパゲッティを作ったのだとか。その後、総料理長はトマトケチャップでは味気がないので、苦心の末、オリジナルのトマトソースを作り、ハム、玉ねぎ、マッシュルーム、ピーマンを入れ、仕上がりにパルメザンチーズとパセリを振りかけて、「スパゲッティ・ナポリタン」を創造したという。

「ナポリタン」という命名は、その昔イタリアのナポリの屋台で売られていたトマトソースをかけたパスタをヒントにしたとされている。

後にスパゲッティ・ナポリタンは街の喫茶店でも出されるようになり、日本中に広まったのだという。ナポリタン大好き人間としては、当時の総料理長に、「ナポリタンを誕生させてくださり、ありがとうございます!」と心からお礼を申し上げたいと思う。

 

神戸元町「グリルミヤコ」 幻のナポリタン

仕事の取材がきっかけで親しくさせていただいている神戸元町の洋食の名店「グリルミヤコ」。創業は昭和40年だが、それ以前に長く外国船のコックだった先代が、店の心臓ともいうべき自慢のドゥミグラスソースを抱えて陸に揚がり、船上のハイカラな味を神戸に伝えてきた。現在はフランスでの修行経験を活かして奥深い料理を作る息子さんがシェフで、お姉さんの細やかで温かいおもてなしと相まって、姉弟で切り盛りするこの店は地元客から観光客までファンが多い。

以前、あまりのナポリタン好きが高じて、今はメニューに無いグリルミヤコのナポリタンの教えを乞うと、快く引き受けてくださったことがある。

 

「グリルミヤコ」伝授 スパゲッティ・ナポリタン

シェフが作ってくれたナポリタンは、バター、ワインほか複雑な芳香がふわぁ~っと鼻腔を抜け、ベーコンと野菜の旨みとコク、調味料が混然一体となって絡まったスパゲッティは、美味しすぎて沈黙してしまったのであった。

 

<材料/たっぷり1人前>

▼材料:ベーコン2枚(ハム、ポールウインナーでもOK)、玉ねぎ(1/2個)、ピーマン (1個)、マッシュルーム(2個)、茹でたスパゲッティ(160g!/細い方がソースによく絡んで美味しい)、粉チーズ(できればパルミジャーノ・レッジャーノ)、パセリみじん切り少々

▼調味料:バター(大スプーンに山盛り)、ケチャップ(大さじ1)、ビーフコンソメキューブ(1/3個弱)、白ワイン少々、水少々、塩・胡椒・味の素 各適宜

 

<作り方>

(1)玉ねぎはやや厚め、ピーマンは千切り、マッシュルームは薄く、ベーコンは小さめにそれぞれ切る。

(2)熱したフライパンにバターを入れて、ベーコン、マッシュルーム、ビーフコンソメを入れて強火で炒め、次いで玉ねぎとピーマンを入れさらに炒める。

(3)炒まってきたら、塩ひとつまみ、胡椒、味の素を入れてさらに炒めて、白ワイン少々と水ごく少々でムイエ(濡らす)する。次にケチャップを入れる。

(4)茹でておいたスパゲッティを入れて炒め上げる。皿に盛り、パセリをのせて出来上がり。

 グリルミヤコ、幻のナポリタン

 

写真(トップ)のナポリタンは北野流

プロのナポリタンの作り方の後に登場させるのは大変気が引けるが、こちらはワタシ流ナポリタンの作り方。具材の野菜は全て同じだが、いつもはハムを使う。私もナポリタンには細めのスパゲッティが好みだ。仕上げには、バターで半熟程度に炒めた玉子を入れるのが大好き。

 

<北野ナポリタンの作り方>

ハム、野菜類を炒めて塩・胡椒を振り、ケチャップ、赤ワイン少々、砂糖ひとつまみを入れてケチャップを焼く感じで炒めたら、バター炒め玉子を加え、茹でておいたスパゲッティを入れてさっと炒め上げる。

 

具材もスパゲッティもたっぷりに作って、心ゆくまで楽しみたいナポリタン。そのとなりにはウイスキーが合う。一口食べれば、イタリアのナポリの料理だと思い込み、ツルツルとオシャマに食べていたおチビの頃を思い出す、私にとって心が温かくなるソウルフードだ。

歳時記×食文化研究所

北野智子

 

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この記事を書いた人

編集部
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