【歴メシを愉しむ(71)】冷や汁な日々

カテゴリー:食情報 投稿日:2020.08.08

巷ではよく、「コロナ太り」という言葉を耳にする。先日も久々に友人たちと会った際、この話題が上り、それぞれウォーキング、ランニング、ヨガ、変わったところでは、キャンプ用の巻き割りで汗を流すなど、様々に好みの対処法を実践しているようだ。私はといえば、長時間散歩とマウンテンバイクで汗をかくようにしている。

さて、長かった今年の梅雨もようやく開けた。が、喜ぶ間もなく、今度は最高気温35℃という容赦ない猛暑が襲ってきた。こう暑くては食欲も減退気味…とはならない自分が怖い。その理由は、ここのところ、「冷や汁(ひやじる)」に凝り始めているからだ。

 

鎌倉時代から食べられていた「冷や汁」

「冷や汁」は、日本各地にさまざまあるが、主に宮崎県の郷土料理として知られる「冷や汁」は、焼き魚や夏の香味野菜、豆腐、胡麻などをのせた麦ごはんに、冷たい味噌汁をかけてサラサラといただくものだ。魚のコク、野菜の爽味、豆腐の甘み、胡麻と麦ごはんの香味、冷やした味噌汁の旨みなどが器の中で混然一体となり、心身を涼やかにしてくれる格別の味わい。さらに魚介と野菜たっぷりの汁物スタイルなので、夏バテ防止やコロナ太り対策にもなるという一石二鳥の美味料理なのである。

「ひやしる」「冷やし汁」「寒汁」「ひやしつゆ」とも呼ばれ、女房詞で「つめたおしる」といったらしい「冷や汁」の歴史は長く、鎌倉時代の食饌(しょくせん/膳に取り揃えた食べもの)について記した『厨事類記』にも出てくる古くからの汁物である。

この名前からして夏場の料理に思えるが、冬でも用いたようだ。米沢上杉藩では武士の登城の時や出陣の折などに、この料理で酒を飲んだり、食事のおかずにしたそうで、一度にたくさん作っておき、大きな甕などに入れて保存しておいたという。

 

昔のレシピを参考に、あれこれ入れてサラサラいこう

歴代の料理書には、様々な「冷や汁」のレシピが見られる。16世紀後半に成立したとされる『包丁聞書(ほうちょうききがき)』には、「鳥とろろといふこと冷汁なり、鳥を炙り細末にして、たれ味噌をかへし鳥を入れ出すなり、鯛とろろといふも鯛の肉をあぶり、鳥とろろの如く調ふるなり、これも冷汁なり」とあり、ここでは「鳥」と「鯛」の冷汁の作り方が記されている。

時代は下り、1643(寛永20)年刊行の『料理物語』には、「いづれも煮抜きに仕立て候、もづこ(もずく)、あまのり、のろ(のろのり)、ふじ(ふじのり)にても入るよし、くり、生姜、めうが(みょうが)、かまぼこ、あさつきなども入るよし」とあり、こちらはバラエティーに富んだ具になっているのが面白い。

さて現代この夏、私が作る「冷や汁」は、宮崎版からだいぶ手抜きをしたもの。

焼き魚には夏の旬魚・いさきを使うのが好きだが、鰺、すずきなどでも美味である。昔の料理書にあるように、鶏肉や鯛、かまぼこを入れるのもよいし、炒り玉子もいいかも。夏バテ防止の「冷や汁な日々」を送る私、毎回具材や味噌を変えるのも、美味し・楽しである。そうそう、コロナ太り対策を念頭に、おかわり厳禁を自らに課している。

 

<いさきの冷や汁の作り方>

(1)味噌汁(麦味噌や合わせ味噌など)を作り、冷蔵庫で冷やしておく。

(2)塩をして焼いた いさきの身をほぐしておく。

(3)薄切りにした胡瓜は塩少々で揉んでおく。

(4)千切りのみょうが、大葉、みじん切りの生姜を水にさらし、ザルにあげて水気を切っておく。

(5)白胡麻を擂り、味噌汁と混ぜ合わせる。

(6)5に、サイコロ大に切った木綿豆腐と2・3を入れ、4と一緒にごはんにかけてサラサラどうぞ。 

※麦ごはんの場合は白米と押し麦を混ぜて炊飯する。

歳時記×食文化研究所

北野智子

 

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編集部
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