【歴メシを愉しむ(85)】紅葉シーズンに食べたい木の葉丼

カテゴリー:食情報 投稿日:2020.11.20

ずいぶん寒くなって、早や世の中は冬めいてきた。

今年は経験のない禍のせいで、季節の移り変わりを身をもって知るのが難しくなって、すでに紅葉シーズン真っ最中となってしまっている。せめて近場でもいいから、紅葉を愛でに行きたいものだと、焦りはじめた今日この頃である。

 

紅葉シーズンに気分を高めてくれる木の葉丼

とはいうものの、いつものぎっしりと重い紅葉狩り弁当とお酒をさげて出かけるなら、いろいろと算段せねばならず、ここは、はやる気持ちを抑えて、まずは、木の葉丼を作って食することにする。

木の葉丼とは、親子丼に並んで私の好物丼ツートップで、その名前から、特に紅葉シーズンには何度も食べたくなるのである。これは、かまぼこに椎茸、三つ葉を出汁と醤油、砂糖で甘辛く炊き、玉子でとじてご飯にのせたもので、かまぼこを舞い散る木の葉に見立てたところからこの名前が付けられたというが、とても風情がある丼である。

木の葉丼がいつ誕生したのかは謎に包まれているが、発祥地は大阪で、関東では馴染みのない丼である。たまに関西の蕎麦屋で、知らない人が、「木の葉丼って何?」と質問し、「うそっ、木の葉丼、知らんの?」と大阪人が返す会話を耳にする。大阪人はみな、全国で木の葉丼が食べられているものだと思っているのだ。

この丼の解説に、肉の代用に蒲鉾を使った比較的安価な丼だの、節約丼だのというものがあるが、木の葉丼ファンとしては、それは違うのではないかと思う。確かに親子丼よりも安いが、そうそう値段は違わない。「木の葉に見立てる」という、日本人、関西人ならではの風流な美意識があったからに違いないと信じたい。もしもこの丼が、「かまぼこ丼」や「かまぼこ入り玉子丼」という名前だったら、決して食べたいとは思わないだろう(笑)。

 

洒落た名前を持つ多彩な関西の丼

関西には丼物が多く、それぞれに洒落た名前が付けられている。

大阪では、親子丼の鶏肉と玉子の組み合わせを、牛肉と玉子に変えた丼を考案し、「他人丼」と名付けた。確かに、この丼の普及と浸透度からみれば発祥は大阪だと思われる。ちなみに、芝居や落語、文楽など、なにわ文化の中心地だった大阪・道頓堀に、食道楽の粋な旦那衆を唸らせ続けて百余年の「はり重」という高級肉販売とすき焼きの老舗があり、併設されたレトロな洋食店のメニューに、「ビーフワン」なる名物丼がある。椀(ワン)の中に牛肉の玉子とじをのせたご飯が入っているこの一品は、名前と肉のこだわり度合いこそ違うが、大阪人が呼ぶ他人丼そのものである。

また、親しみを込めて「お揚げさん」と呼ぶ薄揚げをよく食べる関西では、薄揚げとかまぼこ、ねぎを甘辛く炊いて玉子でとじた「きつね丼」というものもある。その上品ヴァージョンともいえるのが京都の「衣笠丼(きぬがさどん/「絹笠丼」とも)」で、こちらは京野菜の九条ねぎを入れるようだ。金閣寺の背景にある衣笠山に見立てたとされる命名である。

こうしてみると、親子丼は別として、東京で生まれた鰻丼や牛丼、カツ丼はガッツリ・男子系で、片や大阪・京都の木の葉丼、他人丼、きつね丼、衣笠丼はまったり・女子系に思える。

この違いは、東は濃い味、西は淡い味という、昔からの料理の味付けの違いと同じようで面白いなと、色板や焼き板3種のかまぼこで木の葉感を彩らせた木の葉丼をいただきながら思ったのだった。

歳時記×食文化研究所

北野 智子

 

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編集部
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