【歴メシを愉しむ(28)】
冬至冬中冬初め

カテゴリー:食情報 投稿日:2019.12.22

12月22日は冬至。1年で最も昼が短く、夜が長い日。

「冬至冬中冬初め(とうじふゆなかふゆはじめ)」といわれ、二十四節気では冬の真ん中である。冬が極まる冬至だが、この日を境に昼間の時間が少しずつのびていくので、太陽が復活し始めるということから、「一陽来復」(冬が去り春が来ること。悪いことが続いた後 物事がよい方向に向かうこと)ともいわれる。「太陽の誕生日」として、祝い祭るという風習は、世界各地で行なわれており、クリスマスの起源ともいわれている。

 

柚子湯でほっこり、柚釜で一杯

冬が極まるとされる冬至の日の風習が、香りのよい柚子を湯船に浮かべた柚子湯。

年末の慌ただしさもあり体調を崩しがちなこの時季、風邪を防ぐとともに、穢れを祓い、一年間 無病息災で過ごせるとされており、新しい年を迎えるにあたっての邪気を祓う禊ぎ(みそぎ)ともいわれている。一説には、「湯治(とうじ)」と「冬至」の語呂合わせで、「身体息災であれば融通(ゆうずう)が利く」という意味を込めたとか。

 

柚子の黄色には身を清めるとともに、最も太陽が弱まっている時季に、陽の力をいただきたいという願いもあったそうで、黄色く色づいた柚子に太陽復活への祈りを込めていたのだろう。柚子の爽やかな香気は、料理でも賞味され、冬場のビタミンC不足にも重宝されてきた。

この時季、料亭や割烹などで供される「柚香酢(ゆこうず)」は柚子の香味を楽しむ冬至の行事食。大ぶりの柚子の中身をくり抜いた柚釜(ゆがま)に、冬になり最も味がよくなった「冬至なまこ」と呼ばれる冬のなまこを詰めた、熱燗が進む乙な味わいである。

また寒さに強い長寿の樹に実る黄色い果実として、柚子はおめでたいものとして、お正月飾りにも使われる縁起物だ。

 

冬至の食は盛りだくさん

昔から、「冬至南瓜」といわれ、冬至に南瓜を食べると厄除け、中風封じになるといわれている。この「南瓜」をはじめ、「大根」「蓮根」「人参」「こんにゃく」「金柑」など、「ん」のつくものを食べると、「運がつく」といわれる縁起担ぎがある。我が家では、金柑以外の「ん」のつく食材を使う料理としては、「粕汁」や「シチュー」、「煮しめ」などに、金柑は「金柑バラライカ」というカクテルで楽しんでいる。このように出来る限り多くの「ん」のつく食材を食べて、来る年の運を上げるように努めている。

ほかにも、小豆の赤い色で邪気を追い祓うとされた小豆粥は「冬至粥」と呼ばれて食べられてきた。

冬至に食べるとよいとされる南瓜と小豆、ならば、この2種を醤油、味醂、砂糖で煮た料理「いとこ煮」にして食べると、なんだかいいとこどりのような得な気分になるので、こちらもおすすめだ。

 

柚子湯、冬至南瓜、冬至粥など冬至の風習が庶民に広がったのは江戸時代からとされている。冬極まり、太陽の力が弱くなるこの時季は万病の元である風邪を引く人が増えてくるので、身体を温めて、ビタミン豊富な野菜を食べるというのは実に理にかなっている。またまた先人の知恵に、脱帽である。

歳時記×食文化研究所

北野智子

 

  •                    

\  この記事をSNSでシェアしよう!  /

この記事が気に入ったら
「いいね!」しよう!
小泉武夫 食マガジンの最新情報を毎日お届け

この記事を書いた人

編集部
「丸ごと小泉武夫 食 マガジン」は「食」に特化した情報サイトです。 発酵食を中心とした情報を発信していきます。

あわせて読みたい