【歴メシを愉しむ(55)】
昭和初めの“イタリヤ”メニューで面白お家ごはん

カテゴリー:食情報 投稿日:2020.05.16

5月半ばを迎えたが、引き続きの外出自粛の中、初めの頃は、パンだ、お菓子だと、楽しみつつ作っていたお家ごはんも、こう長くなると、多くのお母さんから、「もう疲れた…」「ネタ切れた…」などという声も上がってくるのは当然であろう。ゆえに最近では、お家ごはんも「簡単に作ろう」「気楽に作ろう」という流れになってきた。ということで、本コラムの「お家で楽しむ美味しいシリーズ」では、そこへ「面白がって作る」という要素をプラスしたメニューをご紹介したい。

 

思わず嬉しくなる、微笑ましい料理名とその解説文

先日 懐かしのナポリタンについて書いたが、今日はその続きのような料理のお話である。

私は仕事上からも、年中 食や食文化、食の歴史などの本に埋もれ、それらを乱読するのが趣味の一つだが、時々、クスリと笑える料理やその解説文に出合うことがある。そういうものは明治~昭和初期のものが多い。その理由は約200年もの間、鎖国をしていた日本が、世界に向けて扉を開き、かつ性急に西洋文化を取り入れようとしたことから、食にもそれが反映されているからだろう。

西洋料理文化の受容は肉食解禁から始まった。日本では675年に、仏教の興隆に熱心だった天武天皇が肉食(牛、馬、犬、猿、鶏)禁止の詔を発布して以来、およそ1200年もの間、日本の食べものは肉から遠ざかってしまい、一般の人々の食は野菜や魚中心の粗食だった。それが明治時代になり、肉食が解禁されてまず牛鍋が流行し、その後、洋食が登場するも、西洋の食材は、日本の食の様式に組み込まれ、和洋折衷の洋食として取り入れられていった。

 

昭和13年のハイカラメニューに魅かれる

イタリア料理が大好きな私、本の中でイタリア料理が出てくると、ついじっくり読んでしまうのだが、この料理を見つけた時は思わず笑ってしまった。

その料理は、昭和13(1938)年1月1日発行の雑誌『主婦之友』の付録である『主婦之友新年號附録(しんねんごうふろく)~冬の和洋料理千種の作方』に掲載されている「イタリヤ玉子」。

かつて私の母親も愛読していた『主婦之友』(後、『主婦の友』に改名)は大正6年(1917)年創刊の月刊誌で、長く主婦向けの代表的な雑誌であった(2008年休刊・2014年ムック『主婦の友Deluxe』として復刊)。創刊時は1万部だったが、なんと大正末期には22万部という驚異的に部数を伸ばし、婦人誌の付録に初めて家計簿を付けた雑誌としても知られている。古書店で見つけた時に小躍りして即買いしたこの附録は、附録とはいえ全170ページの立派な冊子で、80年以上前の本なので黄ばんではいるものの表紙には、着物に割烹着の微笑む婦女子がカラーで載っている。

 

「イタリヤ玉子」の作り方<指導:ヴァイオラ・シード先生(帝國女子専門學校講師)>

この中の「玉子の和洋料理三十五種」に「イタリヤ玉子」が紹介されている。ちなみにこの「和洋料理」の「料理」にふってあるルビは「れうり」である。

レシピ解説の冒頭、「イタリー人はチーズを好みますので、チーズの入(はひ)った料理(れうり)をイタリー風と申します。」とあり、決め込んだ言い回しが面白くて笑ってしまう。そして、「チーズは栄養價(えいやうか)高く、肉より經濟的(けいざいてき)ですから、肉代わりに、大いに、使って頂きたいものです。」と続く。

作り方は、「三四人前として、フライ鍋に、バタかその他の油を大匙二杯ほど熱し、みぢん切の玉葱を大匙一杯入れてよく炒め、そこへトマトソースを一合五勺と二分あられに刻んだチーズを大匙七八杯加へて、鹽(しほ)、胡椒し、あればパセリのみぢん切も茶匙一杯ほど加へます。そして、チーズがほゝ“煮熔けるまで炒めましたなら、玉子四箇をほぐして流し、徐(しず)かに全體(ぜんたい)をかき混ぜて、ふうはりと焼き上げ、トーストの上にのせてすゝめるのです。」

 

82年後の現在でも遜色のない美味!

一言でいうとトマトテイストのチーズ入りとろとろオムレツのような一品だが、82年前のレシピとも思えない、現在に通じる美味しさは、さすが『主婦之友新年號附録』である。

写真の「イタリヤ玉子」はレシピを基にし、トマトソースにはトマト水煮缶(ホールならトマトをつぶす)を使用して私が作ったもの。一人分の材料は以下の通り。

<材料>溶き玉子1個、ピザ用ナチュラルチーズ:大さじ2、玉ねぎみじん切り:大さじ1、トマト水煮缶:大さじ2、パセリみじん切り:大さじ1、塩・胡椒:適宜

 

「ふうはり」と焼き上げた玉子がトーストの上でとろりとマッチし、油断すると2枚はいってしまいそうになる。茹でたマカロニやスパゲッティにのせても、レトロ風でいける。

みなさんも面白お家ごはんメニューにいかが。

歳時記×食文化研究所

北野智子

 

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この記事を書いた人

編集部
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